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ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス:宇宙ビジネスの新潮流(3/4 ページ)
米SpaceXは2018年に火星無人探査を行うこと、計画が順調に進んだ場合に、早ければ2024年に火星に有人宇宙船を送り込むことを発表した。再利用ロケットなど派手なプロジェクトが目立つが、ビジネス面でも着実な進ちょくを見せている。
再利用ロケットによるコスト削減インパクトは?
このようにSpaceXは3つの市場を切り崩してきたが、それを支えてきたのが独自の開発手法だ。Falcon/Falcon9開発時には、部品の内製化やモジュール構造を導入。後に公開されたNASAによる開発費検証でも、仮にNASAがFalcon9を開発した場合よりも、圧倒的に低コストで開発されたことが言及されている。
話題になっている第一弾ロケットの再利用に関しては、これまでに4回の第一弾ロケットの回収に成功しており、今年の秋には再利用ロケットによる初めての打ち上げが行われる見通しだ。並行して、保険会社との間で再利用ロケットによる打ち上げ保険料率の設定も進めてきている。
同社のショットウェル社長によれば「第一弾の再利用により30%コストを低減できる」としているが、他方で「コスト削減は着陸後の改修費用や再利用可能回数などによるので、将来的にどの程度の価格低下を顧客に対して提示できるかは不透明」とも言っている。
技術開発だけではなく、マーケティング手法も特徴的だ。ローンチマニフェストと呼ばれる打ち上げ実績と計画の発表、打ち上げにかかる標準的価格の公開、打ち上げ時の動画公開など、いずれも従来業界にはなかった手法であり、慣習にとらわれない発想で展開されている。
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