ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス:宇宙ビジネスの新潮流(2/4 ページ)
米SpaceXは2018年に火星無人探査を行うこと、計画が順調に進んだ場合に、早ければ2024年に火星に有人宇宙船を送り込むことを発表した。再利用ロケットなど派手なプロジェクトが目立つが、ビジネス面でも着実な進ちょくを見せている。
伝統的大手企業による寡占市場を切り崩す
ISSへの物資輸送と並行する形で、開拓をしたのが国際商業打ち上げ市場である。世界の商業打ち上げ市場の大半は静止通信・放送衛星向け需要だ。歴史的には仏Arianespaceが50〜60%の市場シェアを占めてきた。同社は1980年に欧州12カ国・53社が出資して設立されたのが起源で、これまでに衛星250機を打ち上げるなど豊富な実績を誇る。
SpaceXはこの市場を切り崩してきた。2015年の静止衛星の打ち上げ受注実績ではArianspaceが14件に対して、SpaceXは9件受注している。Arianspaceも昨今はSpaceXをライバル視する発言が増えてきている。なお日本の三菱重工業も近年、国際商業打ち上げ市場に参加、これまでに韓国、カナダ、UAEなどから合計4件の打ち上げ受注を行ってきている。
そして、SpaceXが今年初めて参入したのが軍事衛星の打ち上げサービス市場だ。今年4月に米空軍は次世代GPS衛星の打ち上げ契約(82.7百万ドル)をSpaceXと結んだことを発表した。これまで軍事衛星の打ち上げは米United Launch Allianceが独占してきたが、SpaceXは連邦裁判所に行政訴訟を起こし、2015年5月にコンペに参加、今回への受注獲得へとつながる第一歩となった。
米空軍のスペース&ミサイルシステムセンター長は「SpaceXによる打ち上げコストは40%も安い」と言っており、コスト優位性が大きな要因だったことが分かる。今回の契約額自体は小さいが、米国において国防総省の宇宙予算はNASAの予算より大きいことを考えると、この市場において風穴を開けた意味合いは計り知れない。
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