なぜ世界各地の都市で「夜の市長」が注目されているのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
世界各地の都市で、新しい役職の存在が注目されている。「ナイト・メイヤー(Night Mayor)」だ。直訳すると「夜の市長」になるわけだが、彼らはどのような仕事をしているのだろうか。
今後も増えそうなナイト・メイヤー
2016年2月、シドニーではいわゆるこの“締め出し"法に反対するデモが起き、1万5000人ほどが参加した。
クラブ系情報サイトの『パルス』は、この規制法について「解決策のひとつは『ナイト・メイヤー』を導入するよう(シドニーを管轄する)州政府を説得することだ」と述べている。
確かに、問題が起きたから規制するという単純な対策ではなく、クラブなどの経営者たちと、キングクロスのナイトライフに精通している人たちが対話に参加して、皆が納得のいく解決を探ることが必要なのかもしれない。少なくとも、シドニーのナイトライフや、ミュージックやダンスといった文化の発展を担ってきた地域が消滅することは、シドニーにとって、文化的・財政的な損失だと言えるからだ。しかも現在までのところ、この締め出し法によって、キングスクロスの犯罪率は低下していないという。
『パルス』は、アムステルダムのミランの言葉を引用して、こう主張している。「行政は街を繁栄させ続ける義務を負っている」
夜の街を潰してしまうのも行政の勝手だが、そうするにしても、例えばナイト・メイヤーのような役職を作って、これまでとは違う対策を講じてみてからでも遅くはないのではないだろうか。
日本でも、改正された風俗営業法が6月23日に施行されたばかりで、特定の条件を満たせばクラブは24時間営業が可能になる。だが騒音問題など今後も乗り越えるべき課題は少なくない。
世界中の都市でも、夜の街は夜であるがゆえのトラブルに悩まされながら、行政による規制を受け入れて街の中で共存している。今後、各地に増えていきそうなナイト・メイヤーが、世界のあちこちでナイトライフのあり方を見直す助けをしてくれるかもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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