え、空港にそんなクルマがあるの? 深夜に出動する特殊車両:水曜インタビュー劇場(空港のクルマ公演)(2/7 ページ)
空港で働いているクルマといえば、飛行機をターミナルから押し出す「トーイングカー」を想像する人が多いのでは。しかし空港内には、夜中に作業するクルマが存在している。航空会社ではなく、国交省が管理するクルマはどんなことをしているのだろうか。担当者に話を聞いた。
滑走路に埋まっているライトを清掃
土肥: まず、「埋込灯器清掃車」の話を聞かせてください。滑走路や誘導路に埋まっているライトを清掃するそうですね。
担当者: なぜこうしたライトがあるのかというと、パイロットが見て「進入角度は合っているのか」「方向は合っているのか」といった情報を知ることができるので、欠かせないモノなんですよね。
でも、雨、風、砂ぼこりのほかに、飛行機のタイヤ屑が付いてしまうんですよね。そうなると照度が落ちてしまって、パイロットは大変なことになってしまう。
土肥: 「飛行機はどこに着陸すればいいんだ!?」といった事態に陥ることはないと思いますが、そうした最悪な状況にならないように、頻繁に清掃している?
担当者: はい。羽田空港には、この清掃車が4台配置されています。空港には合計1万個のライトが設置されていて、4台で1日に350灯ほど清掃しているんですよ。清掃は毎日していて、飛行機の運行が少ない深夜に行っています。
クルマを見ていただけますか? 車両後部にロボットアームが装着されていますよね。ロボットアームにはセンサーが装着されていて、ライトの位置を自動に検出して清掃します。
土肥: ロボットアームに蛇口が付いていて、そこから水が出るのですか? つまり、水でライトの汚れを落とす?
担当者: いえ、ドライアイスですね。細かなドライアイスを高圧で吹き付けて、汚れを除去します。
土肥: 水ではなくて、ドライアイスが最適なのですか?
担当者: ドライアイスは気化するので、ゴミが発生しませんし、水拭きの必要もありません。いまのところ、ドライアイスが最適ですね。
土肥: 以前はどのように清掃していたのですか?
担当者: 人の手でやっていました。ただ人の手でやっていると、どうしても効率が悪くなるんですよね。目の前にあるライトの清掃が終わったら、次のライトまで移動しなければいけません。また、後ろに飛行機がやって来たら、逃げなければいけません。
土肥: このクルマで作業をしているときも、飛行機が来たら逃げなければいけませんよね(笑)。
担当者: はい。ただクルマには2人が乗車していて、運転手がモニターを見ながら作業をしているときに、助手席の人間は安全を確認しています。もし飛行機が近づいてきても、すぐに退避できるように設計しています。清掃の途中に移動しても、ドライアイスをまき散らすようなことはありません。また、このクルマを導入することで、天候に左右されずに作業ができるようになりました。
土肥: 人の手で行っていたときよりも、作業の遅れが発生しにくくなったわけですね。ところで、清掃してから汚れた状態になるまで、どのくらいの日数がかかるのでしょうか?
担当者: 滑走路では2週間くらいですね。というわけで、2週間に1度のペースで清掃しています。
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