日本と大きく違う、デンマークの高齢者像とは:高齢者福祉の三原則(1/3 ページ)
1988年、デンマークでは「プライエム」(老人介護施設)の新規開設を禁止した。その理由とは?
著者プロフィール:
川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
デンマークの元福祉大臣、アンデルセン氏は次のように述べている。
「プライエムの多くは孤立し、不毛で活気がなく、いる人たちの権威を失わせるようなミニ病院、いわば人生の最期を迎える前の待合室になっていた。プライエムに住む人々にとって、その主体としての生活はプライエムに引っ越した日を境に幕を閉じた。多くの人はこの状況を、施設のまた施設文化の避けられない結果と考えていた」
プライエムは、老人介護施設。1988年、デンマークでは施設のこのような状況と、高齢化率の上昇による財政ひっ迫を背景にプライエムの新規開設を禁止したが、その当時を振り返って述べた言葉である。そして、「できる限り長く自宅に住み続けるために、早めに住み替えること」を奨励する政策に舵が切られる。プライエムという「施設」ではなく「高齢者住宅」を整備し、同時に在宅介護が行き届く体制を整えた結果、現在では55歳から70歳くらいまでの早めの住み替えが一般的であるという。
「自宅に住み続けるために、早めに住み替える」は、一見分かりにくい。意味は、こういうことだ。仕事や子育てが中心だった現役時代の家は、身体的な衰えや家族数・ライフスタイルの変化などから事故の危険や孤独・虚弱化を進めてしまう可能性があるので、高齢者にとっては「不適切な住宅」である。従って、高齢期を活き活きと健康に暮らすためには、高齢者の身体的・精神的状況に見合った住宅、自立生活への支援があり、社会との交流も維持される住宅に早めに住み替えるのが重要である。要するに、自分の家で暮らし続けるには(=「施設」行きにならないためには)、高齢期に見合った家に住み替えるほうが良いというメッセージだ。
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