著者プロフィール:
川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
「健康寿命」が注目されるようになってきた。健康寿命は「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されている。現在の日本人の健康寿命は、男性が平均71歳、女性が74歳とされており、一方、平均寿命は男性80歳、女性86歳だから男性で9年、女性で12年が他者の支援が必要な期間であり、この期間を短くするために、「健康寿命を延ばそう」という機運が高まっている。もちろん健康寿命を延ばすことは、おのおのの高齢期の充実にとっても、社会保障費の適正化にとっても大切なのだが、健康寿命が男性71歳、女性74歳と聞いて違和感を覚える人もいるのではないだろうか。
実際、仕事場・スーパー・夜の居酒屋・休日のハイキングなどで元気な高齢者は、日常的に目にすることができる。男女とも70歳代前半で「健康寿命が尽きる」というのは、あまりに実感に合わない。大体、75歳以上で要介護認定を受けている人は23%(平成27年・高齢社会白書)にすぎないのだから計算が合わない。
では、健康寿命はどのように算出されているのだろうか。「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」という定義から、一般には、健康寿命は「要介護状態になってしまう平均的な年齢」、つまり、要介護認定を初めて受けた年齢を平均した数値だと捉えている人が多いだろう。
実は、まったく違う。健康寿命は、国民生活基礎調査において、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問を行って、「日常生活に制限のない期間の平均」「自分が健康であると自覚している期間の平均」を算出し、年代別人口や生存率などを加味して導いた数値である。
要介護認定という全国共通の客観的な基準ではなく、アンケートに回答した人たちの主観に基づく数値だから、要介護状態ではなくてもどこかが痛いとか、昔に比べて体調が良くないといった人もかなり含まれているだろう。また調査対象は高齢者だけではないので、若くして障害や難病を抱えた人たち、たまたま調査時にケガをしたり病気にかかっていたりしていた人たちも含まれている。
もちろん、健康寿命の「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」という定義からして、このような算出方法がおかしいとは言えないが、一般的な捉え方とは大きく乖離しているのは間違いない。健康寿命が男性71歳、女性74歳とは、若すぎるという違和感はこういうわけである。
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