コラム
日本と大きく違う、デンマークの高齢者像とは:高齢者福祉の三原則(2/3 ページ)
1988年、デンマークでは「プライエム」(老人介護施設)の新規開設を禁止した。その理由とは?
この政策は、「高齢者福祉の三原則」と「住まいとケアの分離」をコンセプトとしている。
「高齢者福祉の三原則」は、一つ目が「生活の継続性」で、できる限り在宅でそれまでと変わらない暮らしができるよう配慮すること。二つ目は「自己決定の原則」で、高齢者自身が生き方・暮らし方を自分で決定し、周囲はその選択を尊重すること。三つ目は、「残存能力の活用」で、本人ができることまで手助けしてしまうのは能力の低下につながるから、やってはいけないということ。
まとめれば、支援があれば在宅で生活ができる人まで施設に集め、受動的な立場に立たせた上で、一斉に過剰かつ画一的なサービスを提供するようなことは、すべきでないという内容だ。
「住まいとケアの分離」とは、居る場所によってケアの質・量が決まるのは不合理・不平等という考え方である。施設では全員に十分なケアが提供されるが、自宅で暮らし続けるとケアの量が限定されてしまうのは問題であり、これを解消するため「居場所とケアがセット」となった「施設」を作るのではなく、在宅で暮らす人それぞれのニーズに合わせてケアが提供できる(住まいとケアが分離した)体制を整え、同時に「高齢者住宅」の拡充を進めていったのである。
日本がデンマークに見習うべき点を、二つ挙げたい。まずは、適切な“高齢者像”の設定だ。日本では高齢者を「助け支える対象」と見る傾向が非常に強いが、デンマークでは「自立的に生きる主体」と位置付けている。この差は、議論の出発点として非常に大きい。
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