フマキラーの蚊取り線香が、なぜインドネシアで売れたのか:水曜インタビュー劇場(蚊公演)(3/7 ページ)
フマキラーの海外展開が絶好調だ。アジアや中南米を中心に進出しているが、売り上げはインドネシアがトップ。1990年に進出してから7年間も赤字が続いていたのに、なぜトップブランドに成長することができたのか。
蚊取り線香1巻で販売
山下: 薬剤(ピナミンフォルテ)をたくさん使っているので、どうしてもコストが高くつく。そうすると、高く売らなければいけません。現地のモノと比べて、2〜3割高かったんですよ。当時のインドネシアはいまと比べて、経済状況が悪かった。こちらとしては「いいモノだから売れるはず」と思っていたのですが、現地の人からすると「高いから買えなかった」んですよね。
価格が高いので手に取ってもらえない。そうなると、体験していただけない。「他の商品に比べて、フマキラーのモノはよく効くなあ」と感じていただければいいのですが、そうしたきっかけをつくることができませんでしたので、試供品を配ることにしました。
土肥: 一度使ってもらうことで、現地の人が「おお、これはいい。次からコレを買うぞ」となったわけですか?
山下: 残念ながら、そう簡単にはいきませんでした。やはり、「価格が高い」を理由になかなか手に取ってもらえなかったんですよね。1箱10巻入っていて、価格は3500ルピア(約27円)。日本では当たり前のように箱で売っていますが、現地はバラ売りのほうがよく売れるんですよね。
土肥: ん? バラ売り?
山下: 1巻(2回分)で、価格は1000ルピア(約8円)。今晩使う分を家の近くにあるワルンで購入する、という人が多いんですよ。
土肥: それにしてもバラで買うと割高じゃないですか。
山下: そうですね。でも、箱単位で購入するのが難しい人が多いんです。現在でも、売り上げの50%ほどはバラ。経済状況が悪かった以前は、バラで購入する割合がもっと高かったですね。
土肥: 蚊取り線香以外にもバラで売っているモノがあるのですか?
山下: たくさんあります。例えば、シャンプー。シャンプーもボトルで購入したほうが割安なのですが、1回分のほうが安い。というわけで、1回分を購入する人が多いんですよね。
購入していただけない理由は、3つありました。1つは「フマキラーの蚊取り線香は高いから」。2つめは「使い慣れたブランドを変えたくないから」。
土肥: ふむ。その気持ちは分かります。日本で蚊取り線香を使っていて、「海外メーカーのモノを使いませんか?」と言われても、ほとんどの人は「いやいや、いまのままでいいよ」と答えるのではないでしょうか。しかも、「価格が高い」となれば、ブランドを変える気持ちにはなかなかなれません。
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