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東京の「地下鉄一元化」の話はどこへいったのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

東京の地下鉄一元化は、2010年、石原慎太郎都知事時代にプロジェクトチームが発足し、国を交えて東京メトロとの協議も行われた。猪瀬直樹都知事が引き継いだ。しかし、舛添要一都知事時代は進ちょくが報じられず今日に至る。この構想は次の知事に引き継がれるだろうか。

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東京メトロの立場

 東京メトロの前身は「帝都高速度交通営団」という。私の世代だと、今でもうっかりして「営団地下鉄」「営団銀座線」などと言ったり書いたりするから要注意だ。帝都も営団も古めかしい言葉だ。帝都は「帝国の首都」、営団は「経営財団」の略だ。

 経営財団は国家が主要事業を統制するために作った事業体だ。帝都高速度交通営団は東京地下鉄道、東京高速鉄道、京浜地下鉄道と東京市の地下鉄計画を統合した。設立は1941年7月。この5カ月後に帝国陸軍はマレー半島に上陸、帝国海軍は真珠湾を奇襲する。

 戦時中は地下鉄のほかに、住宅営団や食料営団なども設立された。これらのほとんどは終戦後に解散、または公団に移行した。しかし、帝都高速度交通営団のみGHQの改組解散命令が出なかった。東京の復興のため、交通事業はしばらく統制が必要という判断だった。その結果、東京の地下鉄は営団地下鉄の独占事業となった。東京メトロに言わせれば「地下鉄はもともとオレのもの」だ。

 独立事業体の東京メトロは、東京都の一元化要求など突っぱねてもいいくらいだ。しかし東京メトロは東京都に対して強い態度には出られない。後述のように、東京メトロの二大株主の1つが東京都だからである。副社長も東京都庁からやってくる。

東京地下鉄株式会社 有価証券報告書(平成28年3月)「経営一元化の内容によっては業績に影響する」と記載されている
東京地下鉄株式会社 有価証券報告書(平成28年3月)「経営一元化の内容によっては業績に影響する」と記載されている

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