東京の「地下鉄一元化」の話はどこへいったのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
東京の地下鉄一元化は、2010年、石原慎太郎都知事時代にプロジェクトチームが発足し、国を交えて東京メトロとの協議も行われた。猪瀬直樹都知事が引き継いだ。しかし、舛添要一都知事時代は進ちょくが報じられず今日に至る。この構想は次の知事に引き継がれるだろうか。
東京都の立場
東京都は営団地下鉄の設立以前から「交通事業は公営事業として自治体が担うべき」という考え方を持っていた。路面電車は統合して東京市電(後の都電)とした。山手線内は都バスの路線がほとんどだ。地下鉄も同様にしたい。この考え方は大阪や名古屋も同様で、現在も自治体の交通事業のあり方の1つとなっている。
しかし、既に民間の地下鉄が開通していた東京では、国の方針で帝都高速度交通営団が設立されてしまった。ただし、東京都(当時は東京市)も出資者である。資本金は国が最も多く、次に東京市、東京の大手私鉄のいくつかも出資した。
東京都の地下鉄事業は1958年から始まる。東京の復興の勢いがつき、交通整備が急務となった。しかし帝都高速度交通営団だけでは資金が乏しく、当初の計画通りに進まなかった。そこで国の諮問機関の都市交通審議会が答申第1号をまとめ、東京都の地下鉄建設を認めた。現在の都営浅草線は、もともと営団地下鉄が免許を持っていて、東京都に譲った路線である。
答申第1号はこのほかに「大手私鉄の都心延伸は相互乗り入れにより実施する」という方針を定めた。これで大手私鉄各社の都心乗り入れ免許は返上され、営団地下鉄または都営地下鉄との相互乗り入れが始まる。こうして東京の地下鉄は営団地下鉄と東京都の分担時代になって今日に至る。そして東京都は「いつか営団地下鉄も都営地下鉄に統合しよう」と考えている。なにしろ営団地下鉄の出資者、東京メトロの株主だ。
関連記事
- オリンピックが開催されても、鉄道網が整備されない理由
2020年東京オリンピックの開催決定で、交通インフラの整備が活気づく。しかしJR東海はリニア中央新幹線の前倒し開業を否定、猪瀬都知事も鉄道整備に消極的だ。オリンピックは鉄道整備の理由にならない。それは1964年の東京オリンピックの教訓があるからだ。 - 羽田空港を便利にする「たった200メートル」の延長線計画
国土交通大臣の諮問機関「交通政策審議会」が、2030年を見据えた東京圏の鉄道計画をまとめた。過去の「運輸政策審議会答申18号」をほぼ踏襲しているとはいえ、新しい計画も盛り込まれた。その中に、思わずニヤリとする項目を見つけた。 - 「普段と同じ」をさりげなく 東急多摩川線の「キヤノンダイヤ」が見事
この夏、東急電鉄が興味深い施策を行った。7月7日から9月26日まで、平日早朝に東急多摩川線と池上線で増発した。その理由は意外にもキヤノンが関係していたらしい。調べてみたら、これはなかなか粋な施策だった。 - 「札幌駅に北海道新幹線のホームを作れない」は本当か?
JR北海道が「北海道新幹線の札幌駅は在来線に隣接できない」と言い出した。既定路線の撤回であり、乗り換えの利便性も低下する。札幌市と建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が反発している。JR北海道の言い分「在来線の運行に支障がある」、これは本当だろうか。駅の線路配線図とダイヤから検証してみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.