東京の「地下鉄一元化」の話はどこへいったのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
東京の地下鉄一元化は、2010年、石原慎太郎都知事時代にプロジェクトチームが発足し、国を交えて東京メトロとの協議も行われた。猪瀬直樹都知事が引き継いだ。しかし、舛添要一都知事時代は進ちょくが報じられず今日に至る。この構想は次の知事に引き継がれるだろうか。
4者協議の行方
「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」は、2010年8月に第1回、2010年10月に第2回、2011年1月に第3回、2011年2月に第4回が開催された。第3回までは資料を元にした意見調整が行われ、東京都と3者の意見に隔たりがあることが確認された。第4回では、一元化の協議継続の確認と、東京メトロ早期完全民営化協議継続の確認、一元化しなくてもできる乗り換えと運賃の改善を実施する方針が決定した。ここで一区切り、という形である。石原都知事時代の案件であるけれど、この協議会の東京都側代表はすべて猪瀬副知事であった。
その後、議論は「東京の地下鉄の運営改革会議」に移行して2013年7月に第1回、2014年1月に第2回が開催された。会議名からも分かるように、一元化という文字はなくなった。議事録や関連資料でも「地下鉄のサービスの改善・一体化」という文言になっている。出席者も東京都知事、東京メトロ社長ともに代理人である。そして第2回で早くも「中間とりまとめ」が作成され、2015年以降は開催されていない。
東日本大震災以降の大変なときに開催されたことは評価したいけれど、石原元都知事が推進した東京オリンピック開催が決定すると、前述のように東京の地下鉄の一元化は棚上げになってしまった。東京オリンピックが終わったら協議が再開されるか。そして東京オリンピックに先行させる「サービスの一元化」の具体案が示されるか。新都知事の采配に期待したい。
もっとも、利用者にとっては「割高な運賃」と「乗り換えの不便」が解消されたら、東京の地下鉄事業者が2社か1社かなどは大きな問題ではないとも言える。間を取り持つ国土交通省としても、東京メトロの価値を下げずに利便性を上げる方策が見つかれば丸く収まる程度の認識かもしれない。首都の交通をどう解決するか。国土交通省の知恵と指導力に期待したいが、塩鉄論も地下鉄論も「言うは易く行うは難し」である。
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