トルコのクーデターは“独裁者”の自作自演だったのか?:世界を読み解くニュース・サロン(1/3 ページ)
トルコでクーデター未遂事件が発生した。クーデターの試みはあっという間に鎮圧され、エルドアン大統領は「自分はヒーロー」であるかのような演出をしてみせた。そんな大統領が、実は世界的にすこぶる評判が悪いのだ。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
トルコでクーデター未遂事件が発生したのは7月15日のことだ。
クーデターの試みはあっという間に鎮圧されたが、結果的に民間人など246人が犠牲になった。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、クーデターに関与したとして軍や警察、司法関係者など5万8000人ほどを解雇または停職にした。
エルドアンは鎮圧後すぐに、テレビを通して政府の支持者に街頭に集まるよう呼びかけ、自分は「極悪人による政権転覆工作に勝利したヒーロー」であるかのような演出をしてみせた。そんな大統領が、実は世界的にすこぶる評判が悪い。近年、独裁色を強めているとして国内外から批判を浴びているのだ。
今回のクーデター騒ぎの後、エルドアンは3カ月の非常事態宣言を発令した。これにより、政府は議会や裁判所を無効化し、メディアを制限することが可能になる。要するに、大統領はしばらくの間、クーデターに関与したという名目で好き放題にさらなる静粛を続けることが可能になるのである。今回の未遂事件直後に、クーデター未遂は「神からの恵みだ」と彼は語っているが、今後、自らの敵を排除することでさらに独裁的なリーダーとしての地位を固めることになるとみられる。
エルドアンはそもそもどれほど独裁的なのか。エルドアンは2001年にイスラム系与党・公正発展党(AKP)の党首になり、2003年からは首相を3期務めた。そして2014年には、党の規則で首相は3期までしか務められないために大統領に就任。この時点で彼はすでに絶大な権力を握っていたが、もともとトルコでは大統領職は儀礼的な存在で権力はないため、自分に忠実なアフメト・ダウトールを首相に据え、意のままに動かした。2016年5月にダウトールはエルドアンとの意見の相違からクビになった。
エルドアンは少し前から、憲法改正をして大統領の権力、つまり自分の力を強めようと画策している。また大統領制への移行も進めようとしており、今回の粛清で反体制派などがいなくなれば、その動きはさらに活発になるだろう。
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