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トルコのクーデターは“独裁者”の自作自演だったのか?世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)

トルコでクーデター未遂事件が発生した。クーデターの試みはあっという間に鎮圧され、エルドアン大統領は「自分はヒーロー」であるかのような演出をしてみせた。そんな大統領が、実は世界的にすこぶる評判が悪いのだ。

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エルドアンが「独裁者」になる日

 とにかく、自らの気に入らないものは排除する。それがエルドアンの流儀なのだ。

 そして今回のクーデター未遂。粛清された人々は、軍人から法曹関係者、ジャーナリストから教授などの学者まで多岐にわたる。彼らの多くは2013年からエルドアンと対立し始めたイスラム指導者フェトフッラー・ギュレンの「ギュレン派」と関連ある人たちだとされている。またエルドアンは、ギュレン派関連の学校やチャリティ団体の2250施設を封鎖した。

 ただクーデターからすぐ後に、クーデターに関与したとしてここまで広範囲の多数を解雇や停職にしたり、施設を閉鎖させるのは容易ではない。つまり、すでに誰を排除するのかはあらかじめ決まっていたのではないかという話も出ている。確かにクーデター後の粛清は、これまでのエルドアンによる独裁者的な動きの延長に過ぎない。

 そして一部メディアでは、ひょっとして今回のクーデター未遂事件は、大統領が自らの権力を強固なものにするための自作自演だったのではないか、という陰謀論まで出ているくらいだ。クーデター未遂からの非常事態宣言で、有無を言わさず政敵を片っ端から排除してしまおう、と。

 真偽のほどは分からないが、いずれにせよ、エルドアンが本当の意味での「独裁者」になる日はそう遠くないのかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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