「富士そば」人気の秘密を探ってみる:高井尚之が探るヒットの裏側(3/4 ページ)
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は売上高と店舗数を伸ばす、立ち食いそばの「名代 富士そば」を読み解く。
競わせる経営で、メニュー開発も活性化
7社に競わせるのは出店だけではない。新たなメニュー開発も各社に委ねている。全店に「かけそば」「もりそば」はあるが、それ以外は自由に開発できるという。サラリーマンの多い店ではボリュームのあるメニュー、女性客も来店する店ではヘルシーなメニューなど、立地に合わせて積極的に開発する。
メニュー開発では社長プレゼンや会長プレゼンもなく、数人の店長を統括する係長クラスがOKを出せばメニューとして提供できる。「判断するのは会社ではなくお客さま」という視点で商品開発もスピード感を重視する。
過去には意外な商品もあった。例えば「揚げたこ焼きそば」は町田店、「チーズクリームそば」は御茶ノ水店が期間限定メニューとして開発したが、人気定着とはいかなかった。
「あまり細かく言わずに積極的に開発させます。そうした中から、最近の例でいえば『ゆず鶏ほうれん草そば』のようなヒットメニューが出ればいいと考えています」(丹有樹氏)
どんな業種であっても、新商品が出れば社内は活性化する。総じて老舗企業は守りに入りがちだが、そうした保守性を防ぐ効果もあるのだ。
ところで「富士そばには年配の店員が多い」という声もある。ときどき利用する筆者も気になっていたので聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「“受け皿企業”として、他社や他業界でうまくいかなかった人の応募も多いからです。当社はそうした人材に対して安定した仕事を提供している自負心はあり、毎年、勤続30年となる社員も出ています。また、少し苦労した人の方が地道な接客ができ、お客さまの満足度にもつながります」(同)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ「アイスクリーム」市場は伸び続けているのか
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は3年連続で過去最高を記録したアイスクリーム市場と有力ブランドを読み解く。業界首位を守り続けるマツキヨの“強み”とは
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は市場規模6兆円超のドラッグストア業界で首位を守り続ける「マツモトキヨシ」を読み解く。なぜいま松屋フーズは“とんかつ”に力を入れるのか
松屋フーズの低価格とんかつ業態「松のや」の出店が加速している――。牛めし業態「松屋」に続く第2の柱として、同社はいま“とんかつ”に力をいれているようだ。その理由とは?オリジンでちょい飲み なぜ「オリジン弁当」をやめるのか
長年親しまれてきた「オリジン弁当」は、リブランディングによって、装いも新たに「キッチンオリジン」へ、看板もメニューも再構築されつつある。その理由とは?