会社は“何のため”にあるのか:「売れる商品」の原動力(2/4 ページ)
そもそも、会社はなんのためにあるのでしょうか。経営者もそこで働く人たちも、お互いが幸せになるためにあるはずです。
ブランドとは「人を幸せにする存在」
そのためには、その会社が持っている本来の役割り、言葉を変えれば“使命”にもう一度目を向け、そこを明らかにし、磨いていくことが必要です。何のために自分たちの会社は存在しているのか。この原点を磨きあげていくことを幸せだと考えられる会社に変わっていかなければならない。
さもなければ、常に目の前の利益という数字だけを追い、その数字の獲れない事業は切り離すとか、人員をリストラするということを繰り返すしかなくなります。競争に敗れれば倒産するほかありません。
実際、かつて一世を風靡(ふうび)し、若者たちに憧れられ、世界から尊敬されていたような企業が、そうした厳しい状況に陥っている事例も少なくありません。私がブランディングの仕事を請け負う際に、「“御社らしさ”って何ですか?」とお聞きするのは、このためなのです。
自分たちの会社が世の中で果たさなければならないことは何なのか。自分たちの会社にしかできないことは何なのか。企業にとっての“自分らしさ”とは何なのか。その「独自性」を発見していく。
ブランドという考え方も、従来のように差別化や識別性という側面よりも、本来は“独自性の追求”が大切だと思うのです。内部にある独自性をどう力あるものにしていくか、という発想に変えていくべきなのです。そこが見えてくると、「ああそうか、うちの会社がやらなければならないことはこれだな」と気付きます。
すると当然、経営者自身も、あるいは従業員自身も、「自分が、会社の中で担っていかなければならないことはこれだな」と、今度は自分の役割りに引き当てて自覚することもできる。会社の使命を明確に磨きあげていくことは、即、そこに関わる人々の使命の自覚にも通じていくのです。
つまり「ブランド」とは、“人を幸せにする存在”なのです。単に商標やデザイン、商品といったものの名称ではなく、人々の心に何を生み出すのかというところにこそ「ブランド」の本質があると私は思っています。関わるあらゆる人々に、幸せになってもらってこそ、「ブランド」なのです。そのブランドを享受する側の人だけでなく、提供する側にとっても“幸せにする存在”が、ブランドになり得るのです。
それが、私が語ろうとしている「ブランド」であり「ブランディング」です。
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