考えていることを「見える化」する:「売れる商品」の原動力(3/7 ページ)
ブランドビジョンを全員が共有するにはどうすればいいのでしょうか。モチベーションにつなげるためにもトップダウンで落とすのではなく、できるだけ多くの人がビジョン作りに参加することが理想的です。
ジェクトワンの決断
二つ目の事例は、私が独立してからブランディングのお手伝いをさせていただいている株式会社ジェクトワンです。同社は不動産売買仲介事業からスタートし、不動産ソリューション事業、中古マンションのリノベーション事業を手掛け、現在は再生可能エネルギーや保育園事業にも進出している企業です。2009年1月の創業ですが、2010年3月期には1億1000万円だった売り上げが、16年3月期には60億円に達しています。
同社の大河幹男社長は、会社が若い今のうちに将来に向かって企業としての理念や事業理念を整理し、これを明確にしておく必要があると考え、ご依頼くださいました。
ジェクトワンの事業内容としては、前述のように「不動産を起点とした各種事業の展開・サービスの提供」ということになります。なかでも主力の事業は二つ。一つはソリューション事業、もう一つはリノベーション事業です。
昨今「空き家問題」が日本の深刻な課題になっているのはご承知の通りです。とりわけ大都市圏では景観だけでなく治安や防災の観点からも対応が迫られています。また有効活用されないまま放置されている土地も少なくありません。地権者は自分の土地に愛着を持ちながら、利用価値が見いだせない場合があります。何とかしたいと考えてはいても、周囲との調整など面倒で複雑な問題があるのでなかなか手がつけられないのです。
ジェクトワンのソリューション事業は、こういった土地の有効活用を通して社会価値を見いだす事業です。同社はこういった土地を自社で購入します。その場合、もちろん周辺の土地も含めた再開発ができることが理想です。そこがうまくいかないことは会社側のリスクになります。
同社は、こういったリスクをあえて背負いながら、卓越したプランニング力とスピード対応、交渉力で再生事業に取り組んでこられました。例えば千葉県の市川市本八幡のプロジェクトでは、老朽化したビル、立体駐車場、再建築不可の木造アパート、木造戸建てが並んでいた敷地を一体化させ、マンション用地へと再生させました。これによって一帯地域の防災面にも大きく貢献しています。
一方のリノベーション事業は、文字通り中古マンションを購入し、その物件をフルリノベーションして販売する事業です。人々の暮らし方や価値観が変わり、新築マンションだけでなくリノベーション物件にも人気が高まっています。
私が驚いたのは、同社の仕事へのこだわり方でした。床はあえて無垢材を使い、壁はしっくい壁にしています。こうした素材は手入れも大変ですが、住めば住むほど味が出てきます。見た目の問題というより、むしろ湿度の調整機能など、住む人への優しさがビニールクロスや合板とはまったく違うのです。
キッチンや洗面など水回りの設備にも上質なものを採用。浴室は断熱性や水はけ、滑りにくさなどにも配慮しています。安い材料をそろえて見た目だけ新築のようにするというリノベーションではなく、小さなお子さんのいる家族がそこから長く家族の歴史を刻んで、やがて孫ができるまで暮らせるような家づくりをめざし、妥協をしない職人的な仕事をしているのです。
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