どうなる? コンビニのたばこ販売:コンビニ探偵! 調査報告書(4/4 ページ)
2016年4月、JTが主力ブランドの「メビウス」と旧3級品のたばこを値上げした。今回は、たばこの値上げがコンビニの売り上げにどう影響するのかを分析してみよう。
「ついで買い」ではない独自のサービスで集客を
コンビニにとって、たばこの売上減少は何を意味するのだろうか。筆者は、2つのことが言えると考えている。
利益増になる
1つめは利益だ。実はコンビニは、商品ごとに利益を計算していない。ほとんどの店舗が、コンビニチェーン独自の計算方法を用いて全体の売り上げから原価率を求めて粗利益を計算している。つまり、たばこの売り上げが減るということは、粗利益率が上がることを示している(粗利益率が高いほど、収益力、競争力が優れていると判断される)。
1日当たり5万円の売り上げに差がある場合を例に計算してみよう。
(1)の「売り上げの70%が粗利益30%、売り上げの30%が粗利益10%のたばこ」と、(2)の「売り上げの85%が粗利益30%、売り上げの15%が粗利益10%のたばこ」がある場合、(2)の方が粗利益率が高くなることが分かる。
実際の店舗利益計算はこんなに単純ではないが、値上げなどで多少売り上げが落ちたとしても利益ベースでは増えることになる。
「ついで買い」メリットを失う
そして、もう1つは「ついで買い」だ。実は、たばこのついで買いで一番多いのは、コーヒーやジュースなどの飲み物である。この飲料カテゴリーは利益率も売り上げも高いので、コンビニ経営者にとっては生命線であるとも言える。
人間は、暑いと汗をかく。暑い夏にコンビニの収益が上がるのは、この飲料カテゴリーによるところが大きいのだ。逆に、暖冬で売り上げが上がるのは、必然的に飲み物を飲む量が増えるからだ。
たばこはライセンスがないと売ることができない。長い間、コンビニはたばこライセンスによる恩恵を受けてきた。逆に、たばこライセンスがないばかりに潰れていった店も、筆者は多く見てきた。
このまま喫煙者が減っていくと、たばこのついで買いもなくなり、粗利益の優位性が保てないほど売り上げが落ちる可能性もある。
先のグラフが示す通り、もはや、たばこの値上げによる売り上げアップの効果が望めないことは明らかだ。コンビニが、集客をたばこに頼る時代は終わりに近づいている。「●●なら、このコンビニ」――そんな何かを新たに見付ける必要がありそうだ。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
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