ブランドは誰をどう喜ばせるのか:「売れる商品」の原動力(2/5 ページ)
ブランドは誰をどう喜ばせるのでしょうか? ブランドを育てるとき、「情緒的価値」を明確に思い描くことが、自分の幸福にもお客さまの幸福にも不可欠な要素です。
どういう「価値観」を持った人なのか
大切なことは、自分たちの会社の強みを生かして、誰かに喜んでもらうことのはずです。喜んでもらうためには、その相手の望んでいるもの、価値観として大事にしているものにフィットしたものを提供しなければなりません。そう考えると、「20代から30代の女性」というような設定では、じつは大ざっぱで曖昧であり、実際的でないことが分かると思います。
ブランディングでは、企業ブランディングであれば、まず社内を同じ方向に向かわせることが重要ですし、商品ブランディングであれば、その商品に関わる人を同じ方向に向かわせることが大事になってきます。ターゲットの価値観をできるだけ鮮明にし、それを共有できなければ、組織はバラバラのままいろいろな方向に力が分散し、「情熱の総量」を上げることができません。
例えば、飲食店を作るとしましょう。若い女性に来てもらいたい。でも、ビジネスパーソンにも来てもらいたい。高齢化社会だから年配のお客さまにも愛されたい。小さい子供を連れたファミリー層にも来てもらいたい。地元の住民にも観光客にも愛されたい……。このように、往々にして経営者側の思いは際限なく広がっていきかねません。もちろん実際に、そうしたさまざまな客層から愛され利用されている店舗というものもあるように見えることもあります。
マーケティングの側面から言えば、より多くの人々から愛されることが望ましいわけで、より幅広い客層が利用し購買してくれるというのは一つの理想ではあります。ただし、ブランディングという視点で考えると、ブランドを育てる側が明確に焦点を合わせるべき具体的な“誰かの顔”がないといけないのです。
そして、ここで焦点を鮮明に合わせるべき“誰かの顔”というのは、「若い」とか「ビジネスパーソン」とかといったその人の単なる外形的な所属で設定するのではなく、その人の“価値観”でカテゴライズすべきなのです。つまり、何を大切にしたいと考えている人なのか、というところに本質があるのです。その大切にしている“価値観”をブランド側と消費者側で共有していくのです。
例えば、カフェやレストランを考える場合でも、自分たちが喜んでほしいお客さまの“価値観”を、さまざまにくみ取ることができます。アクティブに行動するのが好きな人。読書など1人の静かな時間を大切にしたい人。生活の中で上品な空間や時間に触れたいと考えている人。気の置けない仲間とにぎやかに過ごしたい人。その地域に愛着を持っている人。自分の仕事にプライドを持っている人。子供と一緒に過ごすことを大切に考えている人。安全な素材にこだわった手作りの料理を食べたいと考えている人。
自分たちの提供できるもの、その強みといったことがらをよく吟味して、どのような“価値観”を持った人を自分たちは喜ばせることができるのか。そこを考えつくして、ブランディングとしてのターゲット像をできるだけ具体的に絞り込んでいく。それは言葉で長々と説明しないと伝わらない「〇〇で〇〇〇のような人」という漠然とした設定より、究極的には特定の誰かの顔がハッキリ定まっているくらいシンプルに絞り込まれていることが理想です。
なぜなら、企画開発から販売や広報宣伝、経営者から現場のアルバイトに至るまで、そのブランドに関わるすべての人たちが、自分たちが幸福にしたい対象のイメージをブレなく共有する必要があるからです。
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