40年前から教育にICTを活用 人口増にも貢献するつくば市の実践とは?(2/3 ページ)
先進的な教育を実践するつくば市には、全国から教育関係者などがひっきりなしに訪れている。特に今、注目を集めているのが「ICT教育」だ。同市のユニークな取り組みを見てみよう。
40年前からICT教育を実践
そのつくば市が今、全国の教育関係者などから熱い視線を集めているのが「ICT教育」である。
学校の教育現場にPCやタブレット端末、ビデオ会議システムといったITツールを持ち込んで、学習効率を高めようなどとする取り組みで、文部科学省も2020年代に向けた教育の情報化を推し進めたり、全国の小・中学校にデジタル教科書の導入を検討したりしている。そうした国の取り組みに対してアドバイスする立ち位置につくば市はあるのだ。
つくば市は2015年11月、ICT教育などの教育水準の向上と魅力あるまちづくりを推進するべく「ICT教育全国首長サミットつくば宣言」を採択。それを基に、つくば市長の市原健一氏が発起人代表を務める「全国ICT教育首長協議会」を発足した。設立発表会が開かれた2016年8月3日時点で、発起人である10自治体の首長と、全国94市区町村が趣旨賛同自治体として協議会に参加する。この取り組みには文科省をはじめとする国も強い関心を寄せており、「今後も国との連携を強めていきたい」と市原市長は話す。
なぜつくば市はICT教育分野の中心にいるのだろうか。ICT教育と言うと、まだまだ最近のことのように思われるが、実はつくば市は40年前から取り組んでいるのだ。1976年に全国に先駆けてPCを導入、個別教育を実践した。そこから脈々と継続してきた結果である。
現在、つくば市では、電子黒板を全小中学校の普通教室に設置し、デジタル教科書は小学校全学年の国語、算数、理科、社会で、中学校は全教科で活用。加えて、すべての小中学校で同時接続できるテレビ会議システムを導入している。
学外からインターネットを使って学習できるシステム「つくばチャレンジングスタディ」も導入。これによって、例えば、入院中などで通学できない小中学生でも、それぞれの学力に応じて独習することが可能になる。「どこでも、いつでも自由に学習できるこのシステムは、学力向上にも役立っているし、子どもたちのモチベーションアップにもつながっています」と市原市長は説明する。
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