40年前から教育にICTを活用 人口増にも貢献するつくば市の実践とは?(3/3 ページ)
先進的な教育を実践するつくば市には、全国から教育関係者などがひっきりなしに訪れている。特に今、注目を集めているのが「ICT教育」だ。同市のユニークな取り組みを見てみよう。
つくば市の「4C学習」
つくば市のICT教育の特徴は「4C学習」だ。これは「Community(協働力)」「Communication(言語力)」「Cognition(思考・判断力)」「Comprehension(知識・理解力)」を養うことに主眼を置いている。
例えば、言語力については、電子黒板などを活用して互いの考えの共通点や相違点を整理しながら伝えることを1〜4年生で学び、5〜7年生では互いの立場や意図をはっきりさせながら伝え合う、そして8〜9年生では議論してお互いの考えを深めたり、推論を用いて思考して伝え合ったりすることを目標にする。
こうした4Cを育成するためにICTを効果的に活用する。ただし、誤解してはいけないのは、ICTはあくまで教育のためのツールなのだという。
「ICTは1つのツールにすぎない。子どもたちが自ら課題を見つけて、その解決のためにICTをどう活用するか、そういう発想を常日ごろから持ってもらうような教育をすることが大切です。単にICT機器をポンと渡しても意味がありません」(市原市長)
実際、全児童・生徒にタブレット端末を配布して、その後まったく学習に生かしていない、まさに“宝の持ち腐れ”といった学校は多い。
そしてまた、子どもたちの自発性を育てるためには、教員のスキルを高めることも不可欠だとする。「どのようにICTを使うかは、先生も一緒に考えるべきです。そういう場を作っていかないといけないし、その点でつくば市はうまくやっていると思います」と市原市長は胸を張る。
個々の能力を伸ばす教育を
このようなつくば市の取り組みは既に成果を生み出している。
学力面では、「全国学力学習状況調査」(全国学力テスト)において、春日学園9年生が全国トップレベルの成績を上げた。特に応用力を問う試験で高い点数を獲得している。
ただし、単に学力の高低ではなく、それ以外の面での教育がより重要だとする。つくば市教育委員会の柿沼宜夫教育長は「昔のような一斉指導が通用する時代ではなくなりました。個々の能力を伸ばすための教育が今求められています。また、グローバルで通用する人材を育てるためにも、プレゼンテーション能力や思考力の強化が必要なのです」と強調する。
時代とともに教育のあり方は変わっている。そうした流れについていけない学校教育は、果たしていかほどの価値があるのだろうか。教育が今、大きな転換期を迎えているのは間違いない。
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