シェイクシャックは日本で「第二のスタバ」になれるのか?:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(3/4 ページ)
昨年11月に日本初上陸したニューヨークの人気ハンバーガーショップ「シェイクシャック」が国内出店を加速させている。本国でもいまだ行列ができるシェイクシャックの強さとは一体何だろうか?
シェイクシャックは日本で通用するのか
日本フードサービス協会の外食産業動向調査から、売り上げ、客数、客単価の長期の変化を見ると、1990年代後半は客単価が下がり、客数が増えている。バブル崩壊以後、低価格化で成長してきた様子がうかがえる。2003年からは客単価上昇が見られたが、リーマンショックを契機に客単価は一貫して減少傾向にあった。しかし、2013年を境に客単価が反転上昇し、潮目が変わろうとしている。
この流れは外食だけでない。伊勢丹新宿本店では婦人服や雑貨が対前年マイナスになる中、食料品、いわゆるデパ地下の売り上げは前年比プラスが続いている。食における選択基準が「安さ」から「品質」にシフトしつつあることの表れだろう。
また、外食サービスにおいては、原材料などの安全性はもちろんだが、最近ではインスタグラムやツイッターなどのソーシャルメディアに思わず写真をアップしたくなる見た目のインパクトや限定メニューなどの話題性も、消費者にとって重要な選択基準になっている。こういったタイミングでのシェイクシャックの日本上陸は、追い風となっている。
シェイクシャックの強さである「食品の安全性へのこだわり」、「品質を裏付けるプライシング」、「地域密着」は、現在の市場トレンドに適合している。スターバックスが日本で新たな市場を作り出したという意味では、シェイクシャックは“第二のスタバ”になれる可能性を持っていると言えるだろう。
ただし、現時点でのネット上の口コミをみると「割高」という評価が多い点は懸念される。味覚は個人の嗜好性によって判断は分かれるが、価格に見合う価値が伝えられないとリピートされない。業績が低迷していたマクドナルドの復活は「ポケモンGO」効果とは別に、基本品質を確実にアップさせている点にある。
今後品質アップ競争が過熱するとシェイクシャックの割高感が際立ち、一気に顧客が離れる危険性が大きい。高価格の裏付けとなるエビデンスが「安全性」だけでは弱い。シェイクシャックでしか味わえないシンボリック商品を早期に明確化するのが課題ではないだろうか。
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