ローカル線足切り指標の「輸送密度」とは何か?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
「輸送密度が○○人以下の赤字路線」など、赤字ローカル線廃止問題の報道で「輸送密度」という言葉が登場する。この輸送密度という数値の意味は何か。国鉄時代から取りざたされた輸送密度の数値を知ると、現在の赤字ローカル線廃止問題を理解しやすい。
「線区」と「路線」の違い
リストには同じ路線名が何度も出てくる。これは路線を区間ごとに分割して統計を取っているからだ。分割された区間を「線区」と呼んでいる。
鉄道路線の存廃を路線単位にすると、1つの路線で利用率の高い区間と低い区間を平均した評価になってしまう。平均して利用率が高くて黒字でも、末端区間ではとんでもなく赤字になっていれば見過ごせない。逆に、平均して利用率が低い路線を廃止すると、実は利用者の多い黒字区間まで失ってしまう。そこで、鉄道会社は主に長距離路線について、線区ごとに営業成績を評価する。
これは会社の営業部門の評価に通じるかもしれない。営業1課や営業2課など、部門ごとに評価すると、その下のグループや個人の成績と評価が反映されない。優秀なグループの利点は目立たないし、劣等なグループの問題点は見過ごされる。
線区の分割は、鉄道会社の列車運行の都合で実施される。駅に折り返し設備があるか、他の路線と接続しているか、車庫があるか、などだ。
運行の都合とは一方的だけど、列車の運行区間は、おおむね乗客の動向も加味されている。JR北海道では石勝線の南千歳〜新得と、根室本線の新得〜帯広を1つの線区にまとめている。これは、石勝線が札幌と帯広・釧路方面のバイパスとして整備されいるから。根室本線の新得〜帯広間と一体的な運行になっている。根室本線は本来、滝川〜富良野〜新得〜帯広〜釧路だけど、石勝線開業以降、滝川〜新得間の直通特急は消えて、輸送実態としてはローカル路線になった。
500人以上、2000人未満の線区について、報道では判断が示されていない。しかし、「持続的な交通体系のあり方」を振り返れば、自治体の支援が得られれば存続。全く得られなければ廃止と解釈できる。
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