『沿線格差』の著者に聞く、10年後に注目されそうな沿線・駅はココだ:水曜インタビュー劇場(鉄道公演)(2/7 ページ)
家探しをしているときに「沿線」や「駅」を考慮に入れる人も多いのでは。首都圏でいうと「田園都市線がいいなあ」とか「吉祥寺駅がいいなあ」といった感じで。では、これから注目されそうな沿線・駅はどこか。『沿線格差』(SB新書)の著者に聞いたところ……。
「都電荒川線」に注目
土肥: 東京23区に住んでいる人の所得水準をみると、1位は港区、最下位は足立区といった序列が存在していますが、沿線についてはあまり触れられてきませんでした。ただ、日常会話で「中央線はよく遅れるよね」とか「東急田園都市線はオシャレだよね」といった内容を交わしていると思うのですが、それを数値化した書籍はありませんでした。沿線の魅力を数値化するのは難しかったと思うのですが、個人的に気になったことがあるんですよね。
本の中では主要19路線をピックアップして、「いまの状況」を分析されている。しかし、今後はどうでしょうか? 何が言いたいかというと、いまはまだ注目されていないけれど、10年後利便性が高まる沿線があるんじゃないかと。「そんな未来のことなんか分かるわけないじゃないか」と思われたかもしれませんが、無理を承知であえてお聞きしたい。本では紹介していないけれど、気になっている沿線はありますか?
小川: ありますねえ。
土肥: それはどの沿線ですか?
小川: 都電荒川線です。
土肥: 都電荒川線? またマイナーな……いや、失礼。都電荒川線は、荒川区南千住の三ノ輪橋駅から新宿区の早稲田駅を結ぶ路面電車ですよね。ワタシは10年ほど前に東京で働き始めたのですが、初めて都電荒川線を見たとき「いまの時代に、この東京で路面電車が走っているの!?」とびっくりしました。路面電車って前近代的なイメージがあるのですが、なぜその沿線に注目しているのでしょうか?
小川: 都電荒川線の1日の利用客数は5万人を切っているので、それほど多くの人が利用しているわけではありません。また距離も12キロほどなので長くはありません。ただ、乗っていただければ分かると思うのですが、ほとんどの駅にスロープが設置されているんですよね。階段があっても段差は少なく、すぐに乗れて、すぐに降りれる。動く歩道を長くしたような感じなんですよね。
通勤しているビジネスパーソンにとって、鉄道の乗り換えって大変ですよね。階段を上って、下って。5分ほど歩いて、また上って、下って。そのような苦労を経験したことがある人って多いと思うのですが、都電荒川線は階段を数歩上ればホームがあるので、疲れにくいんですよね。また、駅も400メートルほどの間隔で存在しているので、バス停のような感じ。でもバスと違って、時間にあまり遅れません。
首都圏で住んでいる人の多くは「地下鉄は便利だよね」と思っているかもしれませんが、路面電車の利便性に気付いていない人が多いのではないでしょうか。近い将来、路面電車の有益性が再評価されると思っています。
土肥: 「路面電車=古い」といったイメージがありましたが、逆に見直されるかもしれないと。
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