遠いアフリカで、中国が日本にイラついている理由:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
アフリカをめぐって、中国が日本の言動にイライラしている。経済協力の側面でみると、中国は日本を圧倒しているのに、なぜ日本を目の敵にしているのだろうか。なぜなら……。
中国がイラついているワケ
貿易についても同様だ。2015年、日本のアフリカとの貿易額は240億ドルだったのに対して、中国のアフリカとの貿易額は1790億ドルに上る。ちなみに2000年までは中国よりも日本のほうがアフリカとの交易の規模は大きかった。
見ての通り、経済協力において中国はアフリカで日本を圧倒している。にもかかわらず、中国は日本を異様なまでに警戒している。中国は日本とアフリカが近づくのを快く思っていないのである。
中国政府は、今回のTICADで、日本がアフリカへの経済協力を餌に政治的な発言力につなげようとしていると明確に批判している。8月29日の中国外交部の記者会見で報道官は、「第6回TICADの間、残念なことに、日本は自己中心的な利益を得るため自らの考えを押し付けようとして、中国とアフリカ諸国を仲違いさせようとしている」と述べている。報道官はさらにこう続ける。「TICADの前に行われた政府高官らの会議で、日本は、国連安全保障理事会の改革や海洋安全問題を会議の最終声明に含めようと全力を尽くした。そうした課題は、アフリカの開発や会議のテーマからは逸脱しておりアフリカの参加者たちから強い不満につながったと聞いている」
中国は、日本がアフリカへの経済協力によって、アフリカ諸国から安保理改革や南シナ海問題で協力を得ようとしていると主張している。ただ安保理改革について言えば、アフリカ諸国も長年改革を求めており、日本と利害が一致している。アフリカ諸国は国連安保理でアフリカ諸国のプレンゼンスを高めたいと考えており、一方で日本も安保理の常任理事国入りに声を上げている。常任理事国である中国は、第二次大戦の「敗戦国」である日本が国連で発言力が増すのは受け入れられない。
また南シナ海の領有権問題では、オランダ・ハーグの国際仲裁裁判が中国の主張に法的根拠がないという判断を示したことは記憶に新しい。この判決で中国は世界的に孤立しており、中国からするとアフリカ諸国が中国寄りの立場を表明するよう狙っている。そんな中で日本とアフリカが「航行の自由」などで意気投合でもされたら、南シナ海問題にも波及しかねないと中国は考えていると見られている。
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