遠いアフリカで、中国が日本にイラついている理由:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
アフリカをめぐって、中国が日本の言動にイライラしている。経済協力の側面でみると、中国は日本を圧倒しているのに、なぜ日本を目の敵にしているのだろうか。なぜなら……。
政府系の中国メディアも、日本を批判
政府系の中国メディアも、辛辣(しんらつ)な日本批判を繰り広げている。中国共産党中央委員会の機関紙である環球時報は、日本のアフリカへの投資で「日本の行動が中国に対抗したり、アフリカで主導権を握ろうとする目的だとすれば、中国をイラつかせるものである」と書く。
国営の新華社通信は、「誠実さなきアフリカでの日本の札束外交」という記事で、「アフリカの指導者たちはTICADに政治問題がからむことや、日本がそれをねじこもうとすることに反対した。事実、アフリカ諸国は日本による投資の本当の目的をよく理解している。アフリカのメディアの中には、日本による支援の約束は単なる宣伝活動に過ぎないと書いている」と指摘する。筆者が調べる限り、そのような日本に対する批判記事は見つからなかったが、さすがに新華社であっても完全な捏造(ねつぞう)はしないと思われるので、おそらくアフリカのどこかのネット記事か何かにはそういう記述があるのかもしれない。
とにかく、中国がここまで批判を繰り広げるのは、本気でイラついているからに他ならない。
ただ、こうしたすべての批判は「お前が言うな!」と、ブーメラン的に一斉に突っ込まれそうな話である。実際に、1971年に中国が国連に再加盟できたのはアフリカ諸国に「働きかけた」ことによるアフリカ票があったからだ。また南シナ海問題でも中国はアフリカ諸国の賛同を求めており(実際に南シナ海問題で中国の主張を支持している国はアフリカで少なくとも39カ国ある)、その裏に経済協力があることは想像に難くない。
では、日本の思惑はどこにあるのか。日本としては表向き、アフリカを真のパートナーとして日本の援助だけでなく、いまや世界語になった「カイゼン」など「創作工夫を重んじる日本企業の組織文化」をアフリカに伝えたいという思いがある。だが実際には、2050年には人口が25億人に達するアフリカの市場で、自動車や発電所、発電機などを販売し、逆に、天然資源を確保したい狙いもある。特に、福島原発事故の後で国内の原発がほとんど停止していることで、燃料の確保は重要度を増している。
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