東京五輪よりも大きい“ネコ”の経済効果 なぜいまブームなのか:新人記者(応援団長)が行く(2/2 ページ)
いま、史上空前のネコブームが巻き起こっている。なぜいまブームなのか。そして、ネコにはどのくらいの経済効果があるのか。“ミスター経済効果”こと宮本名誉教授(関西大学)に話を聞いた。
ネコブームのきっかけは「たま駅長」
鈴木: ここからさらに詳しくお聞きしたいのですが、まず、自治体などが観光客集めのためにネコを起用するようになったのはなぜでしょうか。
宮本: それは、2007年に登場した和歌山電鐵貴志川線貴志駅の「たま駅長」の存在が大きいと考えられています。もともと和歌山電鐵自体の乗車人数は少なく赤字が続いており、貴志駅は無人駅でした。しかし、ネコ(たま)を駅長にしてみたところ、観光客が殺到したわけです。
メディアに取り上げられるようになり、たま駅長を見るために多くの人が訪れました。和歌山電鐵の乗車人数がどんどん増え、最大の観光資源となったのです。その年に、たま駅長が生み出した経済効果を算出したところ、なんと11億円でした。
鈴木: ネコ1匹で11億円……。それは、他の自治体や企業もマネするのは必然ですね。
宮本: はい。ネコの集客効果がスゴいということが分かり、ネコを使った町おこしを考える自治体が増え始めました。例えば、広島県のJR芸備線志和口駅(りょうま駅長)や福島県の会津鉄道芦ノ牧温泉駅(らぶ駅長)でもネコ駅長を誕生させています。
その他にも、ネコカフェなどネコをコンテンツにしたビジネスがどんどん生まれてきていますよね。算出した昨年のときよりもネコ関連のビジネス(またはコンテンツ)は増えていますから、経済効果はもっと大きくなっていると思います。
日本の社会構造の変化も影響
鈴木: なるほど。しかし、ネコの飼育数が増えているのはどうしてでしょうか。
宮本: 昔は、郊外に一戸建ての家を買って、家族で犬を飼うという世帯が多かったのですが、近年は高齢の1人暮らし世帯が増え、マンションに移り住むケースが多くなりました。寂しいのでペットを飼いたい。しかし、マンションのルール上、犬は飼えないけど、ネコは飼えるという世帯が増えたわけです。
また、高齢者で体が悪い人などは、手間暇のかからないネコの方が飼いやすいですよね。そして、イヌよりも比較的費用が掛からないという点も大きい。
鈴木: 高齢者層でネコの飼育数が増えてきているということですか。では、若い世代やミドル世代ではどうなのでしょう。
宮本: もちろん、増えています。その要因は夫婦の“共働き化”にあるようです。昔は専業主婦が犬の面倒(散歩など)を見ることができましたが、今は共働き世帯が多いため、それが難しくなりました。手間の掛からないネコなら飼えるということでシフトしているようです。
鈴木: なるほど。マンションでの1人暮らし世帯や、共働き世帯の増加――こうした社会的背景もネコノミクスをけん引していたのですね。勉強になりました。本日はありがとうございました。
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