アイリスオーヤマはなぜ「家電事業」に参入し、「結果」を出してきたのか:水曜インタビュー劇場(家電公演)(2/7 ページ)
アイリスオーヤマが家電事業にチカラを入れている。2015年12月期の売上高は400億円に対し、2016年12月期の目標は600億円を掲げている。競争が激しい世界で、なぜ後発組の同社が売り上げを伸ばしているのか。担当者に話を聞いたところ……。
家電は得意分野だった
土肥: ホームセンターの売り場を回ってみると、「これもアイリスオーヤマ」「あれもアイリスオーヤマ」といった感じで、さまざまな商品が並んでいます。例えば、ペットコーナーに行けば「犬小屋」が売っていますし、寝具コーナーに行けば「ベッド」が売っていますし、キッチンコーナーに行けば「フライパン」が売っています。
そんな中で、ここ数年家電商品が増えてきたなあという印象があるんですよ。ちょっと調べたところ、10年ほど前から参入していて、そのころは単純な構造をしているモノが多いですよね。空気清浄機、高圧洗浄機、サーキュレーターなど。しかし、2013年に「大阪R&Dセンター」を稼働させ、大手電機メーカーで活躍してきたエキスパートを採用するなど家電事業にチカラを入れていますよね。実際、オーブンや炊飯器などちょっと複雑な構造のモノを発売するようになりました。
売り上げも順調に伸びていますが、ひとつ疑問があるんですよ。家電業界といえば、日本を代表する大手メーカーがあります。また、技術力が高くて、特徴のある商品を開発する会社もたくさんある。さらに、外資系企業が参入しているので、競争はますます激化しています。そうしたものすごい厳しい環境の中で、なぜアイリスオーヤマは参入しようと思ったのでしょうか?
村越: その答えをお話しする前に、当社がどんな会社なのか説明させてください。現在はさまざまな商品を扱っていますが、もともとはプラスチックの成型を得意とする会社なんですよね。例えば、プラスチックの植木鉢とか収納ケースとかチェストなどを販売してきました。こうした商品には、たくさんのプラスチックを使用しています。
話はちょっと変わりますが、他社工場の多くは素材別にモノがつくられていると思うんです。例えば、プラスチックであれば、プラスチックの製品だけを扱うといった形で。でも、当社の場合、同じ工場内で調理器具をつくっていたり、金属製品をつくっていたり、木製品をつくっていたり。ごちゃまぜになっているんですよね。ごちゃまぜになっていて、どんなメリットがあるのか? ひとつの工場でたくさんの製品がつくられているので、その場で何かと何かを組み合わせれば、新しいモノをつくれるのではないか? と想像することができるんですよね。
で、「なぜ家電に参入したのですか?」というご質問に答えますね。家電を分解すると、プラスチックがたくさん使われていることが分かると思うんですよ。商品によっては、9割くらいがプラスチックでできていて、その中にモーターが入っているといった感じ。当社はプラスチックの成型を得意としているので、自分たちで形を設計して、その中に機械を入れれば「家電」をつくることができるのではないか、と考えたんですよね。つまり、「家電は自社の得意分野ではないか」というところからスタートしました。
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