あなたのその愛想笑いは要注意かもしれない:世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)
日本では一般的に、「笑顔」は好印象なイメージと結びついている。では、海外はどうか。ある調査によると、意外な傾向が……。
笑顔の使い方を意識
知的さと誠実さの両調査を合わせて見ると、インドやイランでは極力笑顔は慎んだほうがよさそうだ。どこでも笑顔を振りまいていると「バカで信用できないヤツ」だと見られかねないからだ。インドを旅行で訪れて、ニコニコ愛想を振りまいていると、もしかすると「バカっぽく騙しやすい」と見られている可能性もあるのである。
ただもちろん、これはあくまで調査研究である。またこの調査にはアジアが誇る「微笑みの国」であるタイが含まれていないが、近年のタイ国内の情勢変化により、調査が容易ではなかったと考えられる。国の選別は意図的ではないにせよ、調査にはそうした限界もあることを忘れてはいけない。
ちなみに、タイの笑顔について言えば、そもそも歴史的にも暴力的な衝突などが頻発してきたタイが「微笑みの国」と呼ばれること自体に無理があると報じているメディアもある。またタイの微笑みには笑い方によっていくつもの含意があると言われている。
この研究はあくまで「知性」や「誠実」を測るという話だ。「笑う」という行為自体は人の脳を活性化させるという研究結果もあるし、「笑い」は伝播して周りに笑顔が広がり、雰囲気がよくなるという経験を誰しもしたことがあるはずだ。笑顔を不誠実と見る傾向のあるインドでも、笑顔でヨガをしてハッピーに、なんていう試みがあったりする。
参考までに記すと、この調査を主導したポーランド科学アカデミーのクリスは、自身のLinkedInのページに掲載しているプロフィール写真ではちょっと緊張した面持ちでなかなかの笑顔を見せている。
これまで気にとめることもなかったであろう「笑顔」の使い方を、これからは少し意識してみてはどうだろうか。グローバル化が進む現代、世界とつながるビジネスパーソンなどには、こういう研究論文も役に立つかもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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