続発するハッキング事件が暗示する本当の「脅威」とは:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
世界的にハッキング事件が頻発している。ハッキングが横行する中、欧米のサイバーセキュリティ専門家らの間である懸念が取りざたされている。その懸念とは……。
犯罪者の片棒を担ぐのに利用されるかも
この問題は、元CIAの内部告発者であるスノーデンがNSA(米国家安全保障局)の機密情報を暴露した際にも浮上している。170万枚の機密文書を盗み出したスノーデンは、自分が告発している内容すべてに目を通したのかと一部で指摘された。つまり、何を暴露しているのかちゃんと分かっているのか、と。
スノーデンは2015年に、米コメディアンのインタビューで「実際にすべての書類を読んだのか」と問われているが、はっきりと答えることができなかった。スノーデンは非常に曖昧(あいまい)な返事で明確な回答を避け、「リークした書類の内容はすべて『把握』している」と語るに止まった。
ハッキングによるリーク情報はさまざまな問題をはらんでいる。サイバー攻撃によって盗み出された情報を、鬼の首を取ったかのように何でもかんでも拾ってありがたがって報じるのではなく、まず慎重にその背景を見極めなければならない。
さもないと、犯罪者の片棒を担ぐのに利用される、ということになってしまう可能性があるのだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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