続発するハッキング事件が暗示する本当の「脅威」とは:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
世界的にハッキング事件が頻発している。ハッキングが横行する中、欧米のサイバーセキュリティ専門家らの間である懸念が取りざたされている。その懸念とは……。
ハッキングによる暴露で、こんな懸念も
また今回の「バハマリークス」もそうだが、ハッキングによる暴露が横行するようになることで、こんな懸念も生まれる。
国家や犯罪組織が背後にいるハッカーが、盗んだ情報を「改ざん」「捏造(ねつぞう)」しかねないという可能性である。彼らは、ハッキングにより盗み出した情報を、本物の内部文書としてメディアなどにリークし、その文書の中に偽情報や改ざんした情報を、さも本物であるかのように見せて入れ込むこともできる。そうすれば、国や企業を揺るがすような情報操作を行えるし、当事者がどれだけ否定しても火消しは容易ではない。
またそうした行為は、民間企業にとっても脅威となる。米ヤフーのサイバー攻撃事件でも、顧客情報が盗まれたこと自体が不安材料となり、現在進められている米通信大手ベライゾンによるヤフー買収が遅れる可能性が高くなっている。ベライゾンはヤフーを約50億ドルで買収することに合意していたが、今回のハッキングで再交渉が行われることになると報じられ、買収額が減るのは避けられないと見られている。
ハッキング自体でそんな大打撃を受けるのに、不利な偽情報が事実にように出回るなんてことがあれば、その影響はさらに甚大である。
現在のところ、ヤフーハッキングの犯人は「国家的なハッカー」というらしい。だが今後は、企業の買収交渉などを有利に運ぶためにハッキングが行われる可能性だって出てくるかもしれないし、企業価値をさらに下げるために本物に見せた偽情報をリーク情報に入れることも考えられる。また、ハッキングで企業の評判を落とすなどして、株価を操作しようとする輩も出てくるかもしれない。
こうした懸念を考えると、盗まれた情報をリークする側には重大な責任があることが分かる。基本的にサイバー空間の特性として、ハッキングでリークされるデータは莫大な量である場合がほとんどだが、盗んだ犯人も、暴露する側のメディアや活動家団体も、それらのデータをきちんとすべて精査しているのかという疑問が生じる。内部文書の一枚一枚が本物であると確認作業をしているのだろうか。
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