内定ブルーになったとき――キャリアカウンセリングで話すこと(2/3 ページ)
10月1日は新卒学生の多くが一斉に入社内定式などに臨む、社会人としてのキャリア確定の日です。この時期は、苦労して勝ち取った内定にもかかわらず、せっかく獲得した内定に悩んでキャリアカウンセリングに訪れる学生も少なくありません。
キャリアカウンセリングに来る学生
就活対策、エントリーシートや面接対策の個人指導・相談に比べれば数はぐっと減りますが、内定先の悩みを抱えてキャリアカウンセリングを受けに来る学生は毎年います。親や大学のキャリアアドバイザーではなく、わざわざお金と時間をかけて第三者にキャリアカウンセリングを受けるのはなぜでしょう。
彼ら彼女らはアドバイスを求めに来ているのは間違いないのですが、それは単に正解を指示してほしいのではありません。なぜ今せっかく苦労して得た内定そのものに悩み、その多くは将来への不安と夢のないまぜになった複雑な心境です。内定先への不満を語ることも非常に少なく、一見何に悩んでいるのか、はた目には分かりづらいことでしょう。
私自身はビジネスの経験上、またキャリアの専門家として企業や経営、特に人事の知見は人事コンサルティングや人事相談を長年担当するなど、一定以上持っていると自負しています。社会人として働いた経験のない学生より、私の判断は適切である可能性は高いはずです。それでもこの正解に近い判断を、学生にストレートに伝えるということは、キャリアカウンセリングの場ではまずありません。
内定ブルーの学生にはどう接するべきか
一見何が不満なのかよく分からない、実際内定先企業がそれほど悪いとも思えない状況で、じっくり学生の話を聞くのは恐らくとても難しいと思います。カウンセラーの傾聴力をもって臨まなければ、聞き手側がしびれを切らして結論を急いでしまうことでしょう。
一番重要なことは、そこです。急がないことに尽きます。正しい判断を伝えること以上に、聞き手側が意見を発するのを我慢し、十二分に学生の話を聞くことが何より欠かせません。カウンセリングに初めて訪れた学生の中には、私が何も示唆を与えず、ただ学生のいうことを聞いているだけの姿勢に疑問を感じる人もいます。「なぜ何もアドバイスをしないのか」と聞かれるのは珍しいことではありません。私は「あなたの状況や考えを聞きたいので、もっと話してほしい。今いった〇〇のこと、詳しく聞かせて」などと話を続けます。
ほとんどすべての学生は善意からでも一方的に社会通念上の判断を提示してくる反応になれているので、さっぱり提示しないカウンセラーには肩透かしを感じるのでしょう。しかし逆に自分の意見をしっかり聞く姿勢は新鮮なのか、この辺りからカウンセラーとの距離は一気に縮まることが多いといえます。
キャリア決定において正しい・間違っているという判断は本当はありません。自分の人生ですから、コンプライアンスに反しない限り、他人の価値観など関係なく決定するのがキャリアです。ただ、コンプライアンス上は問題なくとも、社会通念上明らかに損をする、危険度が高いといった選択はもちろんあります。
貧困学生の存在が問題となり、貧困が原因で希望するキャリアを選べないことが話題になりました。しかし現状が経済的に厳しい環境にあるのであれば、選ぶべき進路もその厳しい経済状況を改善できる可能性が優先されるべきです。経済合理性から見ればそれが正解だと私も思います。しかしそうした正解という結論は、他人に指示されたとしても恐らく納得感が乏しく、もっともな意見だとは分かっても夢を捨てきれないという不整合状況は変わりません。
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