なぜ自動運転はタクシー・バスと相性抜群なのか(2/5 ページ)
自動運転技術――。その実用化は公共交通機関で加速すると言われており、既に世界各地でその予兆が見えはじめている。世界初の自動運転タクシーサービスを開始した米国のベンチャー企業nuTonomy(ヌートノミー)、自動運転小型バス「ARMA」を公道で走らせるBestMile(ベストマイル)の取り組みなど、最新の事例を交えながら解説しよう。
レベル3でも死亡事故は起こりうる
nuTonomyはタクシー、BestMileはバスと、いずれも公共交通での導入を前提としていることも同じだ。自動運転が実用化されると、自動車を所有したいと考える人が減ると言われており、自動運転が実用化されていくプロセスで公共交通の方が有利であることを、彼らは理解しているはずである。
自動運転のレベルを示す指標として、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が制定したレベル1〜4の指標がよく使われる。レベル1はアクセル、ブレーキ、ステアリングのいずれかの自動化、レベル2は複数を自動化したものだ。次のレベル3は、アクセル、ブレーキ、ステアリングの全てを自動化し、必要な場合、人間がサポートする。さらに上のレベル4は、ドライバーが全く運転に関与しない、文字通りの完全な自動運転となる。
現在はテスラモーターズやメルセデス・ベンツ、富士重工業のスバルなど一部の市販車が、レベル2を実現している。当然ながら、次なる目標はレベル3だ。完全自動のレベル4にいきなり移行することは、現状の技術レベルからは考えにくい。
しかし、レベル3への進化でも、自動車には大きな変化が起こる。運転が人間からAIに移行し、人間はドライバーではなく、nuTonomyやBestMileのようにオペレーターになるからだ。
道路状況を視覚情報などで認知し、自分がどうすべきかを判断し、それに応じた操作をするのではなく、AIの運転を監視し、緊急時に非常ブレーキをかけるなどの操作をするという役目に変わる。
問題は、仮にレベル3になったとき、全ての人間が自動車内でオペレーターとしての任務を果たしてくれるかどうかだ。例えば「Pokemon GO」に夢中になって、非常ブレーキをかけ忘れて事故を起こす可能性もある。
今年5月、テスラモーターズの「テスラ・モデルS」がレベル2の運転支援システム(現状では自動運転システムとは呼べない)作動中にトラックに激突し、ドライバーが死亡した。レベル2であるにもかかわらず、DVDを見ていてトラックを避け切れなかったという報道もある。同様の事例がレベル3でも発生しうる。
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