トヨタVS. Google 自動運転の主導権を握るのは?(1/3 ページ)
トヨタ自動車の敵は、もはや自動車メーカーではなくIT企業などの異業種である。そして、その最大の敵はやはりGoogleだろう。本稿ではGoogleとトヨタに焦点を当て、自動運転における両社の動きを解説する。
2010年、それまで自動車業界とは何の関連もなかったGoogleが自動運転車の研究を行っている――と表明した。それをきっかけに昨今の自動運転ブームが始まったことを前回の記事で伝えた。そのとき世界の自動車メーカー各社は自動化を肯定するか否か、対応を迫られた。
トヨタ自動車は当初、慎重な姿勢を見せていた。2014年9月に行った自動運転技術の開発状況の公表では、「高度運転支援システム」と称しており、障害物などを検知して減速、または停止などを行うという内容は、他メーカーでも実用化されている技術だった。このときトヨタは、高度運転支援システムにおいても“ドライバーが常に運転の主役”であるべきという考えを表明してもいる。
ところがそのトヨタが昨年10月、態度を一変させる。首都高速道路で自動運転技術を報道陣へ公開したからだ。披露された技術は他社に遜色ないレベルであり、水面下で開発を進めていたことを示唆した。
トヨタは同年春、今後10年間の五輪・パラリンピックにおけるグローバルスポンサー契約を結んでいる。これにはもちろん2020年の東京五輪も含まれる。一方、安倍晋三首相は同年10月、東京五輪・パラリンピックまでに自動運転の実用化を実現したいと表明した。こうした背景が、トヨタの体制転換につながったのではないかと想像している。
その後のトヨタの行動は早かった。昨年11月には米国に、人工知能技術の研究・開発を行う新会社、TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)を設立すると発表し、今年1月からカリフォルニア州パロ・アルトとマサチューセッツ州ケンブリッジの2拠点で始動した。この2拠点はスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学に近い。トヨタはTRI設立に先立ち、両大学の研究所と人工知能に関する研究で連携していくとしている。
TRIは5年間で約10億ドルの予算を投入し、安全性向上、幅広い層への運転機会の提供、屋内用ロボット開発、人工知能や機械学習の研究加速を目指すという。個々の項目を深読みすれば、自動運転が目的の1つにあることは明白だ。現にTRIは今年4月、ミシガン州アナーバーに3番目の拠点を設立すると発表したが、こちらは自動運転の研究に積極的なミシガン大学の近くに位置している。
同じ4月、トヨタは社内カンパニー制を導入し、短中期の商品計画や製品企画を担当させるという組織改革を実施した。ここには「先進技術開発カンパニー」や「コネクティッドカンパニー」といった、次世代型技術を担当するカンパニーもある。
また本社には「未来創生センター」を新設し、外部の研究機関などの力を取り込みながら、将来の技術やビジネスを長期視点、社会視点で創造していく役割を持たせている。
こうした社内の体制から見ても、自動運転などの次世代型技術を重視していることが分かる。
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