なぜ自動運転はタクシー・バスと相性抜群なのか(3/5 ページ)
自動運転技術――。その実用化は公共交通機関で加速すると言われており、既に世界各地でその予兆が見えはじめている。世界初の自動運転タクシーサービスを開始した米国のベンチャー企業nuTonomy(ヌートノミー)、自動運転小型バス「ARMA」を公道で走らせるBestMile(ベストマイル)の取り組みなど、最新の事例を交えながら解説しよう。
公共交通機関の方が自動運転を安全に導入しやすい
その点、タクシーやバスのドライバーは、運賃を受け取って乗客を運ぶプロのドライバーであり、乗客から常に見られているわけだから、オペレーターとしての任務を遂行してくれる可能性が高い。よってこの分野の方が、自動運転を安全に導入しやすいのである。
さらに自動運転の普及には、その地域が走行許可を出すかも問題になる。自家用車は道路がある限りどこでも行けることが魅力ではあるが、その分日本全体を自動運転対応にしなければならず、入念な準備が必要となる。その点バスなら走行ルートが決まっているから、準備は大幅に楽になる。
nuTonomyはタクシーではあるが、こちらはシンガポールという東京23区と同程度の面積しかない都市国家が舞台である。しかも今回の実験で政府によって運行が許可されたエリアは、同国中部に位置するワン・ノース地区の約2平方キロメートルに限られる。これなら準備は軽微で済む。
ちなみにシンガポールでは、今年8月に我が国のIT企業DeNA(ディー・エヌ・エー)が千葉市の公園で走らせた仏国EasyMile社製の自動運転小型バス「EZ10」も、公道ではないが走っている。アジアでの展開はこのシンガポールが初であり、同国が自動運転プロジェクトに積極的であることが伺える。
しかもnuTonomyの自動運転タクシーでは、乗客は専用のスマートフォンアプリを使い、タクシーの呼び出しや目的地の設定を行うことになる。米国IT企業Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)などのライドシェアが導入しているシステムと近い。これならアプリ側で走行範囲を限定することもできる。
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