世界の衛星メーカーがデジタル&ソフトウェアに投資する理由:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
自動車分野にとどまらず、デジタル&ソフトウェア化の波は衛星業界にも押し寄せてきている。世界各国のプレイヤーたちの動向を見てみよう。
昨今、自動車分野では自動運転に代表されるようにデジタル&ソフトウェア技術に注目が集まっている。その結果、もはやこの分野は自動車メーカーだけのものではなく、GoogleなどIT企業の参入も相次ぎ、競争がいっそう激しくなっているのが現状である。
実はこうしたデジタル&ソフトウェア化の波は、自動車分野にとどまらず、これまでハードウェアが主体であった衛星業界にも押し寄せてきているのだ。
デジタル&ソフトウェアが今後の鍵
「衛星はさまざまなハイテク産業の中でも、とても洗練されており、ハードウェアが重要な要素を担っている。しかしながら、我々が現在注力しているのはソフトウェアだ。最も人材を採用しているのもソフトウェア分野だ」
これは9月中旬にフランスの首都・パリで行われたイベント「World Satellite Business Week」で、大手衛星メーカー・欧Thales Alenia Spaceのジャン・ルイ・ガルCEOの発言だ。同会合では世界の大手衛星メーカーの経営陣が集まり、衛星分野における今後のトレンドに関する意見交換がなされたとのことだが、報道されている各社トップマネジメントの発言内容は今後のビジネス動向を見通す意味でも大変興味深い。
米Space Systems Loralのジョン・セリCEOは「Software-Defined Payload(ソフトウェア定義・制御による衛星)に注目している。フレキシブルなモジュール生産を行うことで、50〜60%のコスト低減にもつながる」と語り、さらには「衛星製造に3年、運用に15年という既存ビジネスとは別のダイナミクスが起きている。将来的にはクルマのように顧客がニーズに応じて機能やオプションを選ぶようになる」と見解を述べる。
米Boeing Satellite Systemsのマーク・スピワック社長も「衛星のデジタル化とフレキシブル化が進むことで部品点数が減り、製造もシンプルになりコストが下がる」と話すなど、各社トップマネジメントの背景にある共通認識は、衛星に求められる機能とものづくりのあり方が変革する段階に来ているという認識だ。そして、そのコアにあるのがデジタル&ソフトウェア技術と見ているのである。
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