連載
世界の衛星メーカーがデジタル&ソフトウェアに投資する理由:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
自動車分野にとどまらず、デジタル&ソフトウェア化の波は衛星業界にも押し寄せてきている。世界各国のプレイヤーたちの動向を見てみよう。
ベンチャー企業は小型化・量産化で勝負する
大手企業だけではなくて、ベンチャー企業からも新たなコンセプトが生まれている。そのキーワードは「小型化」と「量産化」だ。
現在、欧米の衛星ベンチャー企業では数十〜百数十キログラムの小型衛星を量産し、数十機から数百機を打ち上げて、それを連携させるという計画が多数進んでいる(※複数衛星を連携する“コンステレーション(星座)”という概念は古くからあり、米Iridium Communicationsや米Globalstarなどが実現済みだ)。
地球規模の衛星インターネット網構築を進める米OneWebは150キログラムの衛星900基を配備することを計画しているが、それを実現した暁には過去に例を見ないほどの量産規模になる。また、2014年にGoogleに買収された米Terra Bella(旧Skybox Imaging)は120キログラムの小型衛星を数十機配備して、地球規模の観測網を構築する計画を持っている。
同様の計画を掲げる米Planetは“アジャイル開発”の手法を衛星開発に取り入れている。技術進化の著しい民生用電子部品の適用も進めることで、わずか数年の間に衛星のバージョンを10回アップデートする。個々の衛星の寿命が尽きる前に、アップデートされた新規衛星を打ち上げ、随時リプレイスしていくことが基本コンセプトだ。
関連記事
- 「なぜ今、宇宙に“張る”のか」 日本の著名投資家が語る
米国の後を追うように、日本でも宇宙ビジネスに対する投資が盛り上がりつつある。ベンチャーキャピタリストや著名投資家はなぜ今積極的に投資するのだろうか。 - ビル・ゲイツや世界銀行も注目する衛星利用ベンチャーとは?
今、衛星利用ベンチャーが数千万ドル規模の投資を受けるケースが増えている。そこにはビル・ゲイツ氏や世界銀行などが注目する新技術があるからだ。 - ド派手な「火星探査」や「再利用ロケット」の裏でばく進するSpaceXのビジネス
米SpaceXは2018年に火星無人探査を行うこと、計画が順調に進んだ場合に、早ければ2024年に火星に有人宇宙船を送り込むことを発表した。再利用ロケットなど派手なプロジェクトが目立つが、ビジネス面でも着実な進ちょくを見せている。 - ヨーロッパでも過熱化 衛星観測ビッグデータをどう利用する?
2016年に入り、衛星観測ビッグデータや衛星システムの利活用が欧州で活発化している。ソフトウェア大手のSAPや航空宇宙大手のAirbusなどがさまざまな取り組みを進めているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.