世界の衛星メーカーがデジタル&ソフトウェアに投資する理由:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
自動車分野にとどまらず、デジタル&ソフトウェア化の波は衛星業界にも押し寄せてきている。世界各国のプレイヤーたちの動向を見てみよう。
ベンチャーとの提携も加速
こうしたベンチャー企業の取り組みに関して、実現には懐疑的な見方があるのも事実だ。他方で、各ベンチャー企業と冒頭に紹介したような大手衛星メーカーとの間に多数のアライアンスが生まれ始めていることは注視すべきトレンドであろう。
OneWebは衛星製造に関して大手衛星メーカーの欧Airbusと提携している。現在、衛星10機をAirbusのフランス・トゥールーズの工場で製造しており、2019年までにフロリダの工場で700機以上の衛星を製造予定だ。同工場は将来的に他社や政府系機関の衛星製造も引き受けるという。
また、2017年までに21機の衛星を配備することを計画しているTerra Bellaは、2号機までを自社開発したが、量産段階ではSpace System Loralに製造委託している。現在プロトタイプ1機と商用機18機の計19機の製造契約を結んでいる。
デジタル化、ソフトウェア化、量産化、小型化など、“ものづくり”が大きく変わりつつある衛星産業。今後もさまざまなビジネス連携などが進むであろう同分野の動向を注視したい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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