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ヘッドランプの進化とLEDが画期的な理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

国土交通省は2020年4月以降に販売される新車から「オートライトシステム」の装備を義務付ける方針だ。そこで今回は、安全性を高めるためにクルマのヘッドランプがどのようなトレンドで変化してきたのかについて紹介したい。

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LEDが画期的な理由

 そして現在、新たな主流はLEDヘッドランプになりつつある。LEDは電気を流すと発光するという特性を持つ半導体を用いたランプで、従来の「電球型」や「蛍光管型」と比べると圧倒的にエネルギー効率が高い。

 そこまでは従来の効率競争の延長なのだが、もっと重要なのは光束の管理である。LEDの大きな特徴にレスポンスの速さがある。通電後ほぼ遅滞なく最大光量に達し、レンズ側にはほぼ放熱がなく、樹脂製レンズの長期劣化の心配が少ない。さらに容積の問題がほぼ解決され、ヘッドランプユニット前側のサイズを小型化できる。これにより、クルマの顔であるノーズ部のデザインの自由度が大きくなった。

 レンズ側では発熱が減ったが、LEDの場合、代わりに半導体部分では発熱が大きい。この問題は専用の冷却ファンを使うことで解決できる。しかしながら、この背面側の冷却のために、HIDシステムに対して大幅な小型化や軽量化はなかなか達成できないのが現状である。

 ただし、従来にないメリットもある。これまでのバルブ方式のヘッドランプユニットでは、球切れの際にバルブを交換するためのメインテナンススペースが必要だったが、走行中に突如球切れを起こす心配のないLEDの場合、ヘッドランプ裏側に手を突っ込むスペースが不要になった。エンジンルームに搭載する機器が増加を続けている現在、この省スペースは設計次第でいくらでも生かしようがある。

 ここまでLEDのメリットのうち、エネルギー効率と余剰スペースの削減について触れてきたが、実はLEDランプの最大のメリットはそこではない。配光の自由さである。前方への発熱が少ないので、半導体の発光素子を数多く並べることが可能で、マルチ光源によってより広い照射範囲に対して、それぞれの光量での配光が可能になった。つまり、しっかり明るく照らす部分と、薄くでも良いから配光して視野を確保する部分をそれぞれ自由に設定できるようになった。例えば、正面はできるだけ明るく遠くまで照らし、歩行者を幻惑しないように、両サイドは光量を落として配光することが可能になった。

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