コンビニの数は増えているけれど、働くの人の「収入」は厳しいカラクリ:コンビニ探偵! 調査報告書(4/4 ページ)
大手コンビニチェーンはこれまで店舗数をどんどん増やしてきた。「まだまだ大丈夫」といった感じで大量に出店し続けているが問題はないのだろうか。今回は行き着く先の「不安」について考察する。
近くに出店されても文句は言えない
では、この状況を回避できないのだろうか。実は、コンビニフランチャイズ契約の中に、本部が建てる店舗の場所について加盟店側は意見することができない旨が書かれている。
出店に関してオーナーの都合は一切考慮しないばかりか、「隣に建てられても一切文句は言いません」という内容の契約が交わされる。
「そんなのズルいよ。本部のいいとこどりじゃねえか」といったオーナーの不満が残るので、本部は「複数店契約」を用意している。コンビニ各社によって内容はさまざまだが、複数店舗を契約するメリットがいくつか用意されている。とはいえ、複数店経営には本部側から一定の条件が課せられる。「店の運営が本部の方針に沿っているか」「人員の確保はできるか」など、数々のハードルをクリアした者だけが複数店経営の契約を交わせるのだ。
最近、コンビニ各社は、この複数店舗展開を推奨している。裏を返せば「売り上げが高くても近くに出店します。そうなっても文句言わないでね」と宣言しているようなものである。いまのビジネスモデルのままで、高い売り上げを維持し続けるのはもはや不可能なのだ。
複数店舗経営が前提でのコンビニ経営――。うまく軌道に乗ればいいが、複数店舗の運営は簡単ではない。店を持っていれば経費などの一定のコストはかかる。「こんなことならサラリーマンをやっていたほうがマシ」という状況にもなりかねない。
もちろん、本部が目標とする平均日販をクリアすれば、高収入を見込めるだろう。だが、本部が店舗を増やし続ければ、売り上げが減少してしまう……。
複数店を経営することができて、オーナーは「バンザーイ」と喜ばれたかもしれないが、それに見合った“収入を維持する”ことは難しいのである。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
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