“超長寿業態” 日本初のビヤホール「銀座ライオン」の歴史をひも解く:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
首都圏に38店、全国に63店を展開している老舗ビアホール「銀座ライオン」。流行(はや)り廃りが激しい外食業界の中で世代を越えて愛好される、超長寿業態となっているその秘訣、歴史をひも解く。
伝統の「一度注ぎ」が人気
ビールを一番おいしく飲める注ぎ方として歴代店員に受け継がれているのが、ビールサーバーからジョッキやグラスに注ぎながら泡を作る「一度注ぎ」。
なぜ、ビールの液体を注いでから泡を作るという通常のやり方を取らず、伝統の「一度注ぎ」にこだわるかというと、すっきりとしたのど越しと苦味の少ないビールに仕上がるからだ。ビールを注ぐ時に、ジョッキやグラスを11度から12度に傾け、左まわりの渦を作ると、液体内に広がっていた泡がやがて表面に上がって、ふんわりとした泡の層ができる。
ビールを回転させるテクニックにより、余分な炭酸ガスが抜け、雑味が泡に閉じ込められる。「ビールは苦くて飲めない」という人の中にも、「銀座ライオンの生ビールなら飲める」と足繁(あししげ)く通う常連客がいるほどだ。
「週に1度、月に1度と、足を運んでくださる常連が途切れないのが、銀座ライオンの強みです。新しいスタッフが赴任してくると『君より僕の方がこの店をよく知っているよ』という古くからのお客様がいらっしゃって、ビールの注ぎ方でお叱りを受けることもあります。スタッフが鍛えられますね」(経営戦略部広報担当・西村礼佳氏)。
ビールという大衆的な商材を提供するビヤホールを開発し、しかも英国のパブ、フランスのカフェのように何十年、何百年と続くことで味が深まる店舗を構築。ビールの注ぎ方も、「一度注ぎ」にこだわり続け、ビヤマイスターの“一杯入魂”の技が継承されていく。そこに「銀座ライオン」が老舗として強いブランド力を保つ理由があるのだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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