「なにわ筋線」の開通で特急「ラピート」と「はるか」が統合される?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
JR大阪駅周辺の新線計画が進ちょくしている。大阪駅の北側に北梅田駅(仮称)を作り、新大阪駅発着の特急を停車させる。さらにJR難波と南海難波新駅を結ぶ「なにわ筋線」構想が絡む。おおさか東線の新大阪駅延伸も組み合わせると、新たな環状ルートができる。
実は苦戦している関空アクセス特急
もし、南海電鉄が新大阪駅に乗り入れ、JR西日本の特急も南海電鉄を経由するとなれば、それはライバル関係だった「はるか」と「ラピート」の統合である。共通車両の開発も視野に入れるという報道もあった。ただし、どれも決定事項ではなく、可能性だけの議論、思いつきを並べただけとも言える。共同運行といっても、列車をすべて共通化する方法もあれば、神戸高速鉄道のように相互直通運転に準じた方法もある。
しかし、関空アクセス特急について言えば、統合は良いアイデアかもしれない。なぜなら「はるか」「ラピート」ともに苦戦しており、ライバルとして争うどころではないからだ。かつてノンストップ29分で走ったラピートが、所要時間を延ばしてでも停車駅を増やした理由は、少しでも利用客を増やすためだ。「はるか」も朝夕の便は停車駅を増やし、通勤ライナーを兼ねている。利用客が少ないため、2011年3月から2016年3月まで日中の6往復を減便した時期がある。
新大阪駅〜関西空港駅の特急を共同運行にすると、現在は両社とも日中は30分に1本、1日それぞれ約30往復、合わせて約60往復の列車の負担を軽減できる。例えば、毎時00分発をJR西日本の担当、毎時30分発の列車を南海電鉄の担当とする。これで30分間隔は維持できるから、関空アクセスの利便性は損なわない。それぞれ15往復の運行で済むから負担は半分になる。
JR西日本にとって、現在の阪和線のダイヤは飽和状態である。もし共同運行となれば、阪和線の「はるか」の運行は半減する。あるいは読売新聞が指摘するように、関空特急をすべて南海電鉄経由とすれば、もっと阪和線に余裕ができる。空いた時間帯を紀勢本線方面の「くろしお」の増発に使ったり、関空快速など阪和線の普通列車の増発に使える。
しかし、そんなことは南海電鉄だって分かっている。南海電鉄は逆に、ラピートを阪和線経由にして、南海本線の和歌山行き特急「サザン」や空港急行を増やしたいだろう。
結局のところ、商売としてうまみの少ない関空アクセス特急の押し付け合いとなる。互いに1時間に1本の特急を受け持って、30分間隔の運行を維持するというセンで落ち着くかもしれない。
どうして特急列車の押し付け合いが起きるか。それは商売のキホンが低単価高回転だからである。高単価低回転モデルは利益を得にくい。低単価高回転の通勤電車のほうが、高単価低回転の特急列車より儲(もう)かる。ラーメン屋と寿司屋(回らないほう)ではラーメン屋のほうが儲かる。そのセオリーは鉄道も例外ではない、ということだ。
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