なぜ衛星データビジネスでAWSが活用されるのか?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
今、衛星業界でAmazonをはじめとするクラウドサービスの利活用が進んでいるのをご存じだろうか。今回は、欧州、米国、日本それぞれの最新事例を紹介したい。
8万5000点の衛星データを無料公開
同じように、AWSを活用するケースは米国にもある。米地質調査所(USGS)と米航空宇宙局(NASA)の合同プロジェクトである地球観測衛星「Landsat」は、2008年後半から一般に撮影データの無償公開を行ってきたが、2015年にはAmazonが展開する「AWS Public Data Sets」のプラットフォームを活用すると発表した。
AWS Public Data Setsは、誰でも無料でアクセス可能なパブリックデータセットを提供するサービスであり、Landsatに関しては現在約8万5000点の衛星データを公開している。Landsatのデータは公共機関と企業の両方が、農業や林業、都市計画、災害復旧などさまざまなプロジェクトに利用している。
年間8ペタバイトの衛星データでアプリケーション開発を加速
さらに、米国ではより包括的な取り組みがある。米政府系機関NOAA(米海洋大気庁)が2015年に立ち上げたビッグデータプロジェクトだ。
同プロジェクトの背景には、年間8ペタバイト(PB)で増加しているNOAAの気象データのアクセスに課題があり、利活用が特定業界に閉じていたことがある。そこでNOAAはクラウド企業のAmazon、米Google、米Microsoftなど5社提携した。
具体的には、クラウド上に保有データを原則オープン&フリーで公開し、データの統合や分析機能も併せて提供する。顧客企業によるアプリケーション開発の加速と市場投入までの時間短縮を狙って環境整備を進めている。最初に成果を上げたのは「NEXRAD」と言われる高解像度気象レーダー網のデータセットだ。
このデータはさまざまな産業で使われてきたにもかかわらず、データフォーマットは特異なもので、テープアーカイブされていたためアクセスに時間がかかり、圧縮ファイルでも300テラバイト(TB)近いサイズになるなど、利用上の課題を多数抱えていた。しかし、2015年にはAWS上で公開され、そうした課題が解決したのである。NOAAとクラウド企業5社は3年〜5年のCRADA(共同研究契約)も結んでおり、今後もデータセットを拡大していく見込みだ。
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