富士通が島根でロボット生産に踏み切った理由(1/3 ページ)
富士通のPC生産子会社の島根富士通が、ロボットの生産に乗り出した。PC製造で培ったノウハウなどを生かすことで、新たな事業として立ち上げ、今後のビジネス成長のドライバーにしたい考えだ。
富士通のPC生産子会社である島根富士通は、新たにロボットの生産に乗り出す。2016年11月に、ロボット専用の生産ラインを新設して、試作段階にある富士通研究所のメディエーターロボット「RoboPin(ロボピン)」を約40台生産。今後、富士通グループ以外からもロボット生産を受託し、新たなビジネス成長の柱にしたい考えだ。
PCの生産拠点におけるロボット生産では、既にVAIOが、同社安曇野工場で受託生産を開始している。世界的にPC需要が低迷する中、富士通でもPCの国内生産拠点の新たな利活用として、ロボット生産が浮上してきたのが背景にある。
AI技術も組み合わせたロボティクスサービス
島根県出雲市にある島根富士通は、富士通ブランドのノートPCを年間約200万台生産しており、PCの生産拠点としては国内最大規模を誇る。生産された製品は、「出雲モデル」と呼ばれており、国内生産ならではの品質と迅速な出荷体制を実現しているのが特徴だ。
島根富士通では、富士通研究所が開発したロボピンの生産を11月中旬に行った。ロボピンは、人とICTをつなぐロボティクスサービスの実現を目指し、富士通が打ち出した新コンセプト「ロボット・フューチャー・ビジョン」を基に開発されたロボット。両腕や顔、胴など6つの間接構造と、LEDによる表示と音声発話、カメラによる認識技術を活用することにより、オフィスやイベント会場などでの誘導などに利用できるほか、観光案内所や役所、コンタクトセンターのフロントデバイスとしての利用を想定。富士通の人工知能(AI)技術「Human Centric AI Zinrai」と組み合わせたサービスも視野に入れている。
高さは、本体が30センチメートル。さらにコントローラなどが入る円形の台座部分が高さ15センチメートル、直径29センチメートルとなっている。
ロボピンは、今年5月に開催した同社のプライベートイベント「富士通フォーラム2016」で初公開。10月に開催されたIT分野の国際展示会「CEATEC JAPAN 2016」の富士通ブースでも5台のロボピンを展示して、デモストレーションを行っていた。
今回、島根富士通で生産したのは、量産前の製品。主要顧客に対して試験的に導入してもらい、その成果をヒアリングしたり、実証実験を行ったりするためのもので、約40台を生産した。
島根富士通では、過去にロボットを生産した経験はないが、PC向けアクセサリーの生産ラインを改良して、ロボットの生産体制を構築した。
「本体と台座を合わせて45センチの高さは、PCの生産ラインの作業台に乗せることができ、背が低い女性の作業者でも組み立てができる。ノートPCもヒンジ部の稼働部があり、ロボットの稼働部の組み立てにも応用できる。今回の生産によって、ロボットの量産対応にも手応えを感じている」と、島根富士通の宇佐美隆一社長は力を込める。
1人の作業員がすべてを組み立てるセル生産で行い、1台あたり約5時間で組み上げた。
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