通称“海のF1レース”、ついに日本初開催のアメリカズカップとは何か?:日本チームも久々に挑戦(4/5 ページ)
1851年から続く世界最古の国際ヨットレース「アメリカズカップ」が、長い歴史の中で初めてアジアで開催された。予選レース「ワールドシリーズ」の最終戦となった福岡大会のレポートとともに、同カップが“海のF1”と呼ばれるゆえんなどを伝える。
日本チームの挑戦
今大会の注目は、日本チームの出場である。アメリカズカップには1992年、1995年、2000年の3回、日本代表として「ニッポン・チャレンジ」が挑戦したが、本戦への進出は果たせなかった。加えて、2000年以降、大会出場そのものが途絶えていたのだった。
そうした中、2015年4月に関西ヨットクラブとソフトバンクが手を組み、ソフトバンク・チーム・ジャパンを発足。チーム総監督には過去4度(1995年、2000年が日本、2003年、2007年が米国)アメリカズカップに挑戦した早福和彦氏、ヨットの心臓部である艇長(スキッパー)にはニュージーランドチームで優勝経験もあるディーン・バーカー氏を起用した。
10年以上にわたり日本チームが出場していなかったのはなぜか。その一因は資金不足だ。アメリカズカップはヨットの建造費や遠征費など1チームあたりトータルで1億ドルものコストがかかるという。その莫大な資金をねん出するのは決してたやすいことではない。さらに、ヨットレースがスポーツ文化として根付いている欧米ならまだしも、まだまだ認知度の低い日本ではなおさらハードルは高い。そこに手を差し伸べたのが、スポンサーであるソフトバンクの孫正義社長だ。
ソフトバンクグループの時価総額は約7兆4569億円(11月18日時点)、孫社長の保有資産総額は約1兆3265億円(参考:米経済誌「フォーブス」2016年版長者番付)。こうした潤沢な資金源に加えて、孫社長とエリソン会長は旧知の仲。二人の間でどのような対話がなされたかは明らかではないが、ソフトバンク参戦の大きなきっかけになったのは想像に難くないだろう。
福岡大会初日のレース前、メイン会場のステージで各チームの紹介を行う場に、ソフトバンク・チーム・ジャパンのメンバーとともに孫社長も登壇。「目指すは1位」と意気込んだ。
ただしチャンピオンへの道のりはまだ遠いのが実情だ。今大会限りで終わることなく、継続的な挑戦を期待したい。
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