画期的な発明をした『WELQ』の落とし穴:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
デタラメの医療情報を流していた『WELQ』の問題が、いまだ終息していない。「専門家による監修のないまま、根拠が不明確な医療関連記事を載せていた」ということだが、WELQのどこに問題があったのか。多くの人が、さまざまな見解を述べているが……。
「顔」が見えない記事は疑う
そんな自らの「責任」を誇らしげにアピールしていたMedエッジだが、2016年2月をもってWELQにコンテンツが移行され、消滅をしてしまう。そうしてできあがったWELQは先ほども述べたような「無責任メディア」を標榜するようになるわけだが、まるでそれと比例するかのように、匿名性を強めていく。なにしろ媒体の顔であるはずの「編集長」が消えてしまうのだ。
いや、実際はいるのかもしれないが、外に向けても公表していないし、先ほどの媒体資料にも載っていない。
海外で盛んなネットリテラシー教育の中には、怪しい情報を見抜く方法のひとつとして、「その情報を発しているのは誰か」をチェックせよというものがある。
書いている人間の「顔」が見えない記事は疑いましょう――。そんなネット教育を小学校などででも取り入れる時期にさしかかっているのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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