GEに学ぶ、日本企業の「これから」:キャズム理論が進化している(3/5 ページ)
「キャズム理論」と聞くと、「ウチの会社でその考え方を活用するのは難しいのでは?」と思う人が多いのでは。キャズム理論は誕生から25年が経っているが、例えばGEのような大企業でも活用され始めているのだ。具体的にいうと……。
課題1:コンセンサスによる意思決定の問題
1つ目の課題は、根回し・合議制による意思決定の問題だ。
キャズムを超えるには、「顧客の痛み」にフォーカスを絞り込むことが必要である。連載第2回で紹介したように、ドキュメンタムは75分野まで幅広く手を広げていたが伸び悩んでいた(関連記事)。そこで思い切って73分野を捨てて2分野に絞り込むことで、キャズムを超えて大きく成長した。
GEも全社を挙げて新たにインダストリアル・インターネットに取り組む際に、金融事業は収益性が高かったにもかかわらず、新たな取り組みではシナジー効果を生み出さないという理由で、他企業に売却した。
しかしトップダウンによる意思決定スタイルが主流の米国企業とは異なり、日本企業の意思決定スタイルは合議制によるコンセンサス重視だ。時間もかかるし、ともすると折衷案に陥りがちで「捨てる」という意思決定がなかなかできない。だから特定の「顧客の痛み」にフォーカスを絞り込めないのである。
この対応策は、まずは企業全体ではなく、事業部単位で、かつスモールチームでやっていくことだ。数万人の組織全体でやるのではなく、数人から100人程度の組織を切り出して、このチームが迅速な意思決定をしながら取り組む。場合によっては、オフィスも別の場所にする。残りの大多数の人たちは既存事業を継続する。そのような組織を社内にいくつもつくり、その中で成功した事業を主流ビジネスに育てていく。
将来的には、日本のコンセンサスと折衷案に基づく意思決定形態は変えていく必要があるだろう。変化が激しいデジタル時代では、遅れを取ってしまうし、折衷案ではフォーカスを絞り込めないからだ。
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