市場を刈り取るために、何をすればいいのか:キャズム理論が進化している(1/5 ページ)
「テクノロジーの技術に詳しい人を集めて、徹底的に理解した上で、ビジネスを立ち上げよう」と思っている人もいるのでは。しかし、この方法で本当に大丈夫なのか。そこで、役立つのが最新のキャズム理論である。
キャズム理論がいま、大きく進化している。
経営コンサルタントのジェフリー・ムーアがキャズム理論を提唱したのは1991年だ。当時インターネットはまだ普及しておらず、状況は今と大きく変わっていた。25年の時を経て、このキャズム理論が大きく進化を遂げている。
そして最新キャズム理論は、日本市場を再び大きく成長させる可能性を秘めている。
筆者は、キャズム理論に基づいて企業の変革を支援しているキャズム・インスティチュートが都内で行ったセミナーに参加した。さらにこの団体でマネージング・ディレクターを務めるマイケル・エックハート氏と意見交換をした。そこで得られたエッセンスを皆さんと共有したい。
この25年間で、何が変わったか?
1991年にキャズム理論が提唱されて25年、大きく変わったことが3つある。
1つ目は、市場や顧客の変化が数倍速くなったことだ。例えば企業向け携帯電話は、2010年代前半までブラックベリーの独壇場だった。しかしわずか2〜3年で急速にアップルやサムソンに代替えされていった。かつては競争優位性を確立した企業は、10年間は高収益ビジネスを持続できた。しかしいまや競争優位性は2〜3年程度しか継続しない。持続的競争優位性の時代は終焉(しゅうえん)し、一時的な競争優位性を常に継続して獲得し続けることが必要になっている。だから常に顧客や市場の変化に対応して変革できる体制が求められているのだ。
2つ目は、顧客がますます力を持つようになったことだ。例えばインターネット登場前は、最安値の商品を買うためにはいろいろな店を回る必要があった。今では価格比較サイトで、市場の最安値はすぐ分かる。企業の不祥事もすぐに表に出てしまう。かつては顧客よりも企業のほうが知識を持っていたが、ネットが隅々まで行き渡った現代、顧客は何でも知っている時代になった。昔から顧客を騙(だま)すという行為は商売倫理上の問題があった。しかし現代では、そもそも顧客を騙すことは不可能な時代になったのだ。
3つ目は、1990年代からクラウド、VR+AR、モバイル、アナリティックス、AI、ソーシャル、IOT、ビッグデータといった新しいデジタルテクノロジーが次々と登場し、ビジネスのあり方を大きく変えているということだ。この20年間、グーグル、アップル、アマゾン、アリババ、サムソンなどは、これらのデジタルテクノロジーを十二分に生かし、世界で躍進し大企業に成長した。
日本でも、ソーシャルを活用したソニーのプレイステーション、最近では任天堂ポケモンGOのような成功事例もいくつかある。しかしかつて世界を席巻した1990年代までの日本企業の輝きと比べると、寂しさは否めない。日本企業の多くは、デジタルテクノロジーの恩恵をビジネスに生かし切れていないのである。
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