米国の衰退から学ぶ、ショッピングモール再生:来週話題になるハナシ(2/3 ページ)
米国のショッピングモールが衰退しつつある。数年ほど前から客足が減っていて、いまや「デッドモール」と呼ばれる廃墟が目立っている。なぜ、かつてのような輝きを失ったのか。その一方で、再生に向けた動きも始まっている。
ショッピングモール衰退の背景
そんなショッピングモールは、リーマンショック以後、どんどん厳しい状況になった。特に地方を中心に閉店に追い込まれたショッピングモールも少なくない。
一般的にショッピングモール衰退の背景には、ネットショッピングなどの台頭があると言われている。ただそれだけが理由ではない。
原因のひとつには、ショッピングモールの主要テナントである百貨店の不振がある。洋服などのファッションにお金をかける消費者の減少により、大手百貨店はかなりの苦戦を強いられている。
大手百貨店のMacy'sは、すでに55店舗を閉店させているが、残る全店舗の約14%にあたる100店舗を新たに閉店することを発表したばかりだ。
言うまでもなく、主要テナントの撤退はショッピングモールを運営する会社にとって大打撃だ。賃貸収入が減るのはもちろんのこと、空いたスペースに別のブランドを誘致するのは至難の技だからだ。
さらに、百貨店の入っていた広いスペースが空くと、ショッピングモール自体のイメージも悪くなる。閉店した店舗が目立つと「寂れた感」が出てしまい、モールを訪れる客足に影響が及ぶため、他の店舗の売り上げも左右されてしまう。負の連鎖になりかねないのだ。
ショッピングモールの衰退には、こんな意外な理由もある。モールが商業目的だけに偏り過ぎていることだ。
利益を重視して何がいけないのか。グルーエンは、ショッピングモールを構築する際に、古代ギリシャの集会所や中世のマーケットのように、共同生活に必要な生活を豊かにするコミュニティセンターの役割をイメージしたという。
つまり、単に買い物をするだけではなく、文化的、社交的、市民的、レクリエーション的な役割を持つショッピングモールこそが、人やモノや情報が行き交い、商業的な成功を収めることができるのだという。
例えば、病院や医療センター、ホテル、オフィス、居住スペース、劇場や展示ホール、子どもの遊園地や教育施設などがあれば、ショッピングモールを訪れる人の滞在時間やトラフィックが増え、利益増にもつながるというのだ。
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