伊豆大島が「ゴジラ」に頼る、残念な思考:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
伊豆大島で「ゴジラ像」の設置計画が進んでいたが、住民の反対によって白紙撤回に。「ハコモノ」をつくりたがる自治体と、有効な税金の使い方を求める住民の対立はよくある話じゃないかと思われたかもしれないが、この騒動の本質はそこではない。何かというと……。
観光をどう産業化させていくか
そんな伊豆大島の貴重な「外貨」獲得の手段となっているのが年間20万人の観光客だ。納税者が減って、高齢者福祉を受ける方たちが雪だるま式に増えていく町としては、この観光客数を増やして「観光」を基幹産業化するしか道はない。つまり、今回のシン・ゴジラ像騒動が浮かび上がらせた問題を一言で言うとこうなる。
「基幹産業のない人口減少社会が観光をどう産業化させていくか」
個人的には、これこそが2017年の日本経済を考えるうえで避けては通れないテーマだと思っている。
総務省によれば日本の老年人口比率(2016年9月現在)は27.3%で3割台が目前に迫っている。つまり、伊豆大島は近未来の日本の姿なのだ。とはいえ「基幹産業がない」という文言に殺意を覚える方も多いだろう。鉄鋼業や製造業の勢いはないが、先端医療やロボットやら、まだまだ世界トップレベルの技術を誇る分野もある。「日本の技術力は世界一ィィィーーーー! 」という『ジョジョの奇妙な冒険』のシュトロハイム少佐ばりの絶叫があちこちから聞こえてきそうだ。
断っておくが、そういう素晴らしい技術を有する企業や、これから成長が期待できる分野を否定しているわけではない。ただ、それらの「ひと握りの企業」によって、疲弊した地方経済すべてを盛り立てることができるかというと、それは現実的には難しいと申し上げているだけだ。
人口がタワーオブテラーのように急降下する日本では労働力も市場としての旨味が減るので、世界に誇れるような技術力をもつ企業であればあるほど、安い労働力やサプライチェーンの優位性を求めて海外へ飛び出していく。かつて地方経済繁栄の原動力となった「企業城下町」というモデルは完全に崩壊してしまっているのだ。一方で、佐川急便の荷物蹴り上げ事件に象徴されるように、労働人口が急激に減っている中で、身の丈に合わぬ「価格競争」などが繰り広げられるため、あらゆる産業が「ブラック化」しており、それを覆い隠したツケがすべて「地方」にまわされるという悪循環も生まれている。
経済メディアで、バイオだ、ロボットだ、AIだ、フィンテックだ、と明るい日本経済を夢想させるようなキーワードが飛び交っているものの、老年人口比率が3割を超え、生き残りの道を探す大島町のような「地方の町」にとっては「別世界の話」というのが本当のところなのだ。
だからこそ、「観光の産業化」が重要になってくる。
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