「コケても興収10億円」中国映画の急成長:海賊版とダフ屋があっても伸びる(3/3 ページ)
「君の名は。」の中国展開が好調だったが、実は中国の映画産業は、年々成長を続けている。中国の映画産業に何が起こっているのか? 中国とビジネスをしていくうえでどんなことが必要とされるのか? 「君の名は。」の中国展開を担った柏口之宏代表取締役に聞いた。
中国とのビジネスで成功するためには?
成長しているのは映画業界だけではない。建設バブル、VPNの規制強化により進むイントラネット化など危惧すべきポイントは多いが、それでもこれからのビジネスにおいて中国マーケットを完全に無視することはできない。中国とのビジネスで成功するためには、どのようなことが必要なのだろうか。
「コンテンツや商品の中身は、中国に合わせる必要はない。ただ、ビジネスのやり方や商慣習は中国に合わせなければいけません。少なくない日本人が『日本は上だ、教えてあげるんだ』といった発展途上国に対するようなマインドセットを持っている。でも、今やマーケットやビジネスの規模は日本よりも遙かにダイナミックです」
柏口氏はかつてセガ・チャイナのCEOとして働いていた。その当時は、中国に対して下に見るような気持ちを無意識に抱いていたという。それが切り替わったのは、セガ・チャイナを辞めた時だ。
「CEOの時はどこのドアも開いたし、周りにちやほやしてくれる人がいた。けれど今思えば、『こいつは俺に金をもたらしてくれる』『こいつからお金を引き出そう』と思われていただけ。セガというアイデンティティーを失えば、誰もいなくなりました。でも、そこで『お前にはお前の強さがある。お前と組みたい』となんのメリットもないのに言ってくれた人がいたんです」
柏口氏によると、中国には「日系プライス」が暗黙のうちに存在しているという。家賃も設備費も人件費も地元の平均より高く請求される。そのため、海外企業はローカルプライスでやっている中国企業と互角に戦うことが難しくなる。
「日系プライスがあるなんてこと、セガ時代は知りませんでした。中国には“内と外”という概念がある。外側にいる相手とは、中国人同士だとしてもだまし合う。しかし内側に入れば、どんな時でも味方をしてくれる。独立して初めて、中国でビジネスをやっていくイメージができました」
中国はこれまで、製造業の拠点として世界の中で存在感を放っていた。しかし、内需拡大と輸出政策に舵を切り、転換点を迎えている。そんな中国といかに歩んでいくかは、今後さまざまな企業にとっての大きな課題になるはずだ。
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